抱腹絶倒
俺は駄洒落を言うのが好きだ。
自宅で家族に対して駄洒落をよく言っているし、職場でも何かにつけて駄洒落を言っている。そんな俺の駄洒落に対する反応は、苦笑いされるか完全に無視されるかの二択で、ウケた試しなどない。いつかみんなを大笑いさせてみたいものだ。
ある日、俺は渾身の駄洒落をひとつ考えた。きっとこれならみんな大ウケするに違いない。しかし、その駄洒落をすぐに披露はしない。駄洒落を言うのにもタイミングがあるのだ。
例えば定食屋でトンカツ定食を頼むときに、「このイクラいくら?」などという駄洒落は言うべきではない。そんなタイミングで言っても何も面白くない。この駄洒落は市場でイクラを買う時か、寿司屋でイクラを注文した時にでも言うのが正解なのだ。
今回考えた駄洒落は言うべきタイミングがかなり限定される物だった。この駄洒落はその時が来るまで大切に取っておくことにしよう。
そして、その駄洒落を披露するタイミングは、意外と早く訪れた。
駄洒落を思いついてから一月後、俺は病院に来ていた。最近体調が良くないので、精密検査を受け、その結果を聞きに来たのだった。
病院の先生は書類をむずかしそうな顔をして眺めながら、俺に言った。
「申し上げにくいことですが……ハッキリとお伝えします。あなたは癌です」
来た。駄洒落を披露する絶好のタイミングだ。俺は張り切って駄洒落を目の前の先生に言った。
「何? 癌ですって! ガーン!」
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