死ぬべき人間

 ある日の放課後。僕はいじめを苦に自殺を決意した。


 そして、学校の屋上から飛び降りようとしていたところを、たまたま居合わせた担任の川口先生に止められた。


「よせ! バカなことはやめろ!」


 先生は僕を必死で止めようとした。


「いいんです、先生。僕は勉強も運動もできないし、みんなにいつもいじめられている。生きている意味はないよ。自分は死ぬべき人間なんだ……」


 僕が冷めた口調でそう言うと、先生は強い口調で反論した。


「そんなわけないだろ! 死ぬべき人間なんて、この世に1人もいない!」









 先生が大声でそう言い切った、その時だった。遠くで何かが光ったかと思ったら、次の瞬間一筋の光が先生の胸を貫いていた。先生は胸から血を吹き出し、そのまま倒れてしまった。


「せ、先生……」


 あまりにも急な出来事に、僕は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。


 そんな中、さらに驚くべきことが起こった。空中に空飛ぶ円盤が現れ、屋上に着陸したのだ。円盤の中から宇宙服のようなものを着た、2人の人間が出てきて、先生に近づく。拳銃のようなものを構えながら、2人は何かを話し始めた。


「やりましたね! ターゲットの抹殺に成功しましたよ! わざわざタイムマシンで過去に来た甲斐がありましたね。まあ、過去の人間に目撃されてしまいましたが……」


 1人がそう言って僕の方を向いたけど、僕は恐怖のあまり何も言えず、その場で金縛りになっていた。そんな僕を特に気にすることなく、2人は会話を続ける。


「まあ、大丈夫だ。幸い目撃者は彼1人のようだし、記憶改竄装置を使えば問題あるまい。しかし、コイツを抹殺できてホッとしたよ。この川口という男が生きていると、我々の時代を支配している例の独裁者が誕生してしまうことになるからな」


「確か独裁者になる男を過去で抹殺したとしても、この川口という男が生きている限り、別の人間が独裁者になってしまうんですよね。この川口という男自体は善良な教師に過ぎないのに、不思議なものです」


「まあ、運命というか因果というか、そういうことなんだろうな。まあハッキリと言ってしまえば、この男は我々にとって『死ぬべき人間』だったということさ」

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