副作用

 その博士はある薬の研究していた。長年の研究の末生み出しされたその薬には、人の疲労を瞬時に回復させる効果があった。その上気分を高揚させ運動機能も上昇させる夢のような薬だ。しかも危険ドラッグのように依存性もない。


 市場に出せば絶対に売れる自信はあった。しかし、まだモルモットを使用した動物実験で成功しただけであり、人間で薬を試したことはないのでこのままでは発売はできない。


「この薬を発売するには人間でも安全かどうか確かめなければない。一刻も早く製品化したいが仕方ない」


 博士の言葉に助手は頷く。


「人間での実験が必要ですね。では実験に参加してくれる人を探して……」


「待った。人を探していたら、また時間がかかってしまう。私が実験台になろう」


 博士の申し出に助手は驚く。


「大丈夫ですか? まだ人間にはどんな副作用があるかわかりません。博士に万が一のことがあったら……」


 博士は笑って言う。


「なーに、理論上は人体に無害のはずなんだ。しかも動物実験も成功しているんだから、最悪死ぬこともないだろう。実験に使ったモルモットは今も元気に生きているんだからな。では、今日から私は実験をしながら、この研究室に泊まり込むことにする。君は明日もいつも通りの時間に来てくれ」


「わかりました。でも何かあったらすぐ連絡してくださいよ」


 助手は心配しながら、研究室を後にした。




 翌日の朝、助手は研究室に入ると同時に悲鳴を上げた。


「は、博士! や、やっぱり副作用があったんだ! しかもこんな効果が出るとは、動物実験なんて何の意味もなかった……」











 研究室では、白衣を着た巨大なモルモットが元気一杯に部屋中を駆け回っていたのだった。

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