執事になったおじいちゃん

 友達の前で見栄を張って「うちには執事がいるんだぞ」と嘘をついてしまった。「じゃあ証拠を見せてみろ」と言われて大慌て。


 そこでうちのおじいちゃんに「執事になって!」とお願いした。優しくて頼み事を断れない性格のおじいちゃんは、僕の頼みを聞いて、執事の格好をしてくれた。スーツを着た爺ちゃんは、常に僕の後ろを歩き、僕のことを「坊っちゃま」と呼ぶ。その格好や佇まいはなかなか様になっていて、友達はみんな信じたし「アイツの家には立派な執事がいる」と噂をしている。僕は得意だった。


 でも、ある日とあるお金持ちがうちを訪ねてきて「人が足りないから来てくれ、金ならいくらでも出す」と爺ちゃんを執事として雇おうとしてきた。優しくて頼み事を断れない性格のおじいちゃんは、頼みを断ることができなくて、そのままお金持ちのところへ行ってしまった。


 その日以来、おじいちゃんは僕の家からいなくなった。家中探しても、あの優しいおじいちゃんはいない、どこにもいない。僕は泣いた。

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