三方一両損

 地下室で、目覚めた2人に俺は声をかける。


「2人とも目が覚めたかい? 孝太郎、真美さん。え? ここは何処かって? ああ、ここは俺の家の地下室だよ。普段は倉庫として使ってる。君たちが寝ている間に運ばせてもらったよ。ここではいくら大声を出しても音が外に漏れないから、気兼ねせず騒いでもらっていいよ。たとえ助けを呼んでも誰も来ないからね」


 俺は縄で縛られた2人の友人、孝太郎と真美さんを眺めながらウィスキーのロックを一口、口に含んだ。


「『なんで俺たちは縛られているんだ』だって? まあ、おいおい話すよ。そう焦らずにさ、思い出話でもしようか。君たち2人との出会いはいつだったっけ。そうだ、大学に入ってから最初の授業の時友達がいなくて1人座ってた俺に孝太郎が話しかけてくれたんだよね。それから2人で同じサークルに入って、真美さんに出会った。俺たち3人いつも一緒だったよね。楽しかったよ。そして、俺は3人で過ごすうちに真美さん……君を好きになってしまったんだ!」


 俺が怒鳴ると真美さんが縛られた身体を震わせた。



「それを相談した相手は孝太郎、君だったよね。そしてこう言ってくれた『よし、じゃあ俺も協力する』って。なんて頼もしい友人だろうかと思ったよ、その時は。でもなんで、なんで2人が付き合ってるんだよ!」


 縛られた2人はひたすら俺に謝罪するが、構わず演説を続ける。


「俺が2人の関係を知ったのは先週だったよな。2人が腕を組んで仲良く歩いているのに俺が偶然出くわして。君たちは気まずそうな顔をして。確かに失恋したことも悲しかったけど、それ以上に俺にその関係を秘密にしてたのが悲しかったんだよ。特に孝太郎は協力するとか言ってたくせに、せめて付き合うことになったら言うのが筋だろ!」


 2人はひたすら謝るが、俺には何も響かない。


「俺は想い人と親友を同時に失った。このかなしみがわかるか。俺はひどく傷ついたよ。だから……君たちにも傷ついて欲しい」


 2人は青ざめた。


「大丈夫、殺したりなんかしない、友達だったんだからさ。ただ、俺はこれから……君を犯すことにする」


 2人は騒ぎ出す。






「『真美に手を出すのはやめろ!』だって? 何勘違いしてるんだ。犯すのは真美さんじゃない、君の方だよ孝太郎」


 孝太郎の怒号が地下室に響く。


「『何考えてるんだ、お前そう言う趣味があったのか!』だって? いや、俺は異性愛者だよ。恋愛対象としては真美さんの方が好きだよ。けどさ、例え真美さんを犯したとして、俺は一時は気持ちいいかもしれないけど、その後ただ捕まって終わりだよね。俺はことが終わったら君たちを解放するつもりだから、そしたら2人は俺を警察に突き出すだろ? 真美さんが俺に犯されたと言う事実は明るみに出るかもしれないけど、世間はみんな2人に同情するだろう。2人とも一時は落ち込むだろうけど、なんだかんだで立ち直って仲良くやっていくだろうね、きっと」


 俺は持っていたグラスをテーブルに置き、さらに話し続けた。


「そうなったら何も面白くない。だから俺は孝太郎を犯すのさ。言えるかい? 孝太郎が俺に犯されたって事実を警察に。言えないよね、こんなこと世間に知られたらみんななんていうだろうね? 被害者の孝太郎のことを酷く言うやつも出てきそうだよね、あるとこないこと噂してさ。俺はさ、2人に傷ついてもらって、誰にも言えずに2人でずっと苦しんで欲しいんだ」


 2人は泣き叫んで謝り始めたが、もう俺は止まらない。


「それに考えてみれば、これは公平なことだよ。孝太郎は俺に犯されて傷ついて、それを見た真美さんも心が傷つく。そして俺は2人に裏切られたことに加えて、不本意にも同性の孝太郎を犯すことで傷つく。3人とも同じくらい傷ついている。いわゆる『三方一両損』というやつだ、公平だよ公平」


 俺は孝太郎のズボンとパンツを脱がし、俺も下半身を露出させる。2人の泣き叫ぶ声がさらに大きくなる。俺は孝太郎のケツに陰茎を当てながら、俺は涙を流す。


「俺だって……俺だってこんなことしたくなかった! なんでだよ! 大好きだった真美さんも、大親友の孝太郎も! みんな俺から去っていった! それに何でこんなことに……なんで俺は孝太郎なんかとセックスしようとしてるんだよ!」


 でも、もう止まらない。俺は己の陰茎を、思い切り孝太郎のケツの穴に突っ込んだ。

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