ネット麻雀
大学生の俺は、今ネット麻雀にハマっている。
「クソ! またやられた! ここで役満とかふざけんなよ!」
俺はスマートフォンをぶん投げた。
確かこのプレイヤーこの間も対戦した。あの時もここぞという時でヤツに和了られて負けてしまった。アイツイカサマでもやってるんじゃ無いだろうな?
文句を言いながらスマホを拾い上げ、ホーム画面に戻ると運営からのメッセージが出た。一体何だろう?
『平素より◯×ネット麻雀をご利用いただきありがとうございます。一部のユーザーの方への特別なお知らせです。プレイ中相手プレイヤーに腹を立てた事もありませんか? そんなあなたに対戦中相手のアカウントを停止させることができる、アカウント停止ミサイルを一発1000円で提供させていただいています』
「なんだって! そんなものがあるのか! 買ってみよう!」
俺は迷わずそれを購入した。
その後対戦を続けていると例のアイツとマッチングした。相変わらずここぞと言う時に俺から和了やがって、許せねえ。
「くらえ! アカウント停止ミサイル発射!」
その瞬間、ヤツの動きが止まる。しばらくしてからアイツの操作はCPUに代わった。牌をツモって切るだけになってしまったのだ。そんなアイツを見逃す俺ではなく高めの手を直撃させて勝利した。ざまぁ見ろ。
その後、ネット対戦でアイツのアカウント名を見ることは無くなった。その後本当に停止してしまったようだ。1000円は安くなかったが、憎きアイツがいなくなったなら悪い買い物ではなかった。気分が良い。
しかし、そうなるとまたミサイルを打ちたくなってきた。対戦中に嫌いになった奴は他にもいっぱいいる。
「でも一発千円は高いよな」
そう思っているとまた運営からのメッセージが入った。
『アカウント停止ミサイル、今なら10発5000円の半額セールを実施中!』
「何!? 半額セール? なんて安いんだ! これは買わないと」
俺は迷わず飛びついた。結構な出費だが仕方ない、来月はもっとバイトを増やそう。
こうして俺のネット麻雀ライフは快適なものになった。嫌な奴はみんなミサイルで粛正できるのだから。
しかし、同時に俺は不安になった。
「もし、他の奴がミサイルを撃ってきたらどうしよう?」
もしそんなことになれば、今までの苦労も金も全てがパーになる。何かいい方法はないだろうか。そんなことを考えていると、また運営からのメッセージが届いた。
『ミサイル攻撃が不安なプレイヤーさんに朗報です! ミサイル攻撃を1週間無効化する、ミサイルバリアの販売開始しました!』
さすが運営。俺が欲しいものをちゃんとわかってやがる。早速購入した。
しかし、また困ったことになった。ミサイルを撃っても無効化されることが多くなったのだ。他の奴らのバリアを張っているのだろう。これでは何発ミサイルを撃っても意味がない。どうしたものかと考えていると、やはり運営からのメッセージが届いた。
『ミサイルバリアに困っているプレイヤーさんに朗報! ミサイルバリアを突破してくれる、破壊工作員の販売を開始しました』
当然購入した。さらにメッセージが届く。
『対破壊工作員用のトラップの販売も……』
当然購入。当然だ。
それから俺の生活は忙しくなった。毎週ミサイルバリア購入し、獲物をリサーチし、破壊工作員を派兵する。もちろん自分のアカウントにトラップを仕掛けることをも忘れない。そうしているうちにまた運営から新兵器導入のお知らせが入り、それを購入する。そんな日々を送った。
当然お金はかかるので、俺は以前の倍以上の時間バイトをするようになった。正直大学生活に支障があるレベルになってきたが、今更後戻りはできない。
そんなある日のバイト中、俺は少ない休憩時間でスマホをいじる。俺のアカウントに罠を仕掛け、敵のアカウントに工作員を派遣した。さらに工作員の育成や、バリアとミサイルの強化も忘れない。ここ数ヶ月でこのゲームもさらに色々な要素が追加されたのだ。
そんな俺を見て、バイトの後輩が話しかけてきた。
「先輩何やってるんですか? スマホゲーム?」
「ああ、こんな感じのゲーム」
俺はスマホの画面を見せる。ちょうど今俺のアカウントの軍備を増強したところだ。
「へー、こんな戦争シミュレーションゲームがスマホであるなんて知りませんでした」
後輩はそんなとぼけたことを言いやがったので、俺は呆れた声で言ってやった。
「はぁ? 何言ってんだよ。これはどこからどう見ても『麻雀』ゲームだろうが」
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