夜中の客人
私は普通な会社に勤める普通の会社員。特に裕福でもなく貧しくもなく程々に生活している。
ある日の夜、家の誰もいないはずの部屋から騒がしい音がした。
部屋を覗くと、そこには和服を着た見知らぬ女の子が2人いた。1人白い服を着て、もう1人は黒い服を着ている。
おかしい、玄関の鍵はちゃんと閉めたのに、どこから入って来たのだろうか?
しかも、女の子たちは大喧嘩をしていた。お互いに罵り合い、殴ったり髪の毛を引っ張り合ったりしている。突然のことに驚いた私は、しばらく呆然としてその様子を眺めていた。
喧嘩は次第に白い服の女の子が優勢になった。白い服の女の子は黒い服の女の子に馬乗りになり、頭を叩いている。
ここで私は我に帰り、黒い服の女の子を庇った。いくら子どもの喧嘩とはいえ、これ以上はやりすぎだと思ったからだ。
「可哀想だ。もうやめなよ」
私が白い服の女の子にそう言うと、その子は私の目をじっと睨んできた。黒い服の女の子は私の後ろに隠れ、足をぎゅっと掴んでいる。
「その子を庇うの? じゃあもういいわ。さようなら」
白い服の女の子はため息をついて、部屋から出ようとした。そこで私は引き止める。
「ちょっと、待ってよ。そもそも君は一体誰なんだい?」
白い服の女の子は、振り返って言う。
「私? 私は座敷童子よ」
そう言い残すとその子はスッと消えてしまった。
座敷童子といえば住み着いた家に幸運をもたらすという妖怪だ。では、この黒い服の女の子は一体何なんだろうか?
その疑問に答えるように、足にしがみついたまま黒い服の女の子は笑いながら言った。
「私は貧乏神っていうのよ。これからよろしくね」
貧乏神はもう二度と離さないとでも言うかのように、より一層力を込めて私の足にしがみつく。
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