こんな俺でよかったら……
少年が放課後の校舎裏で、少女に告白した。
「俺は運動はできないし、そんなに勉強もできるわけでもない。顔も不細工で性格も暗い。こ、こんな俺でもよかったら付き合ってくれませんか?」
それに少女が答える。
「はぁ? 何言ってるの。付き合うわけないでしょ。いや、そもそもそんな告白の仕方ってある? 自分のことをひたすら卑下して、それで付き合ってくれだなんてよく言えたもんだね。例えばセールスマンが『この商品高いし、汚いし、なんの役にも立たないけど、よかったら買ってくれませんか?』ってなんて言って商品を買うお客さんがいると思う? いないでしょ、そんな人。あなたがやってるのはそれと同じよ」
すると、少年は少女の言葉に返事した。
「……おい、黙って聞いてりゃいい気になりやがって。オマエは何もわかっちゃいない。恋愛のことも、人間の心も、何もかも。いいか? まずオマエは俺の告白をセールスマンの営業に例えたよな? どこで付けた知恵だか知らないが、まずその例えが間違っている。俺の告白はな、営業なんかじゃない。『乞食行為』だ。確かに普通のやつなら自分のセールスポイントをアピールするのもいいかもしれない。しかし、俺のような人間は違う。俺のような持たざる者にはもう真っ当にアピールして女の子に好かれるという道は残っていない。アピールできる長所がほぼないんだからな。残された道は乞食しかない。『付き合ってください』とお願いするしかないんだ。となると中途半端な長所のアピールは禁物。逆にいかに自分がダメで哀れな人間かをアピールしなければならない。そうすれば万が一、いや億が一俺のことを哀れに思った女の子仲良くしてくれる可能性があるかもしれない。俺はそれに賭けて今日オマエに告白した。失敗したけどな。今回のオマエでちょうど10人目だ、告白に失敗したのは。じゃあ俺は行くぞ。11人目を探さなくちゃならないからな」
少年そう言って、少女を校舎裏に残して去っていった。
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