大高騰
ある朝、俺はなんとなくテレビをつけた。経済のニュースが流れる。内容は平均株価がいくらだとかいうもので、続いて金やプラチナなどの貴金属の相場が映る。俺は貧乏で株も貴金属も持っていないし、買う予定もないのでなんの関係もないニュースだ。
チャンネルを変えようとリモコンを持った時、興味深い内容が俺の目に飛び込んできた。
『なお、A氏の大便はグラム当たりの価格でプラチナを上回る高値を記録しています』
「何!? 俺のうんこが!?」
ニュースで言っているA氏とは俺のことだ。なぜか俺の顔写真まで映ったので間違いない。俺のうんこがなぜこんなに高騰しているのかは不明だが、これは面白いことになったぞ。金の卵を産むガチョウを手に入れたようなものだ。いや、実際は俺自身がガチョウなのだが。
俺は宝石店へと向かった。こんな時どこに行けばいいかわからなかったが、宝石店なら俺のうんこを買い取ってくれそうだ。
俺の予想は当たっていた。宝石店に入ると、俺の顔を見た店員の顔つきが変わったのだ。続いて店の奥から店長らしき男性が現れて、俺を奥の部屋に案内された。店長が丁寧な態度で俺に応対した。
「今後も末永くお付き合いを……」
そんなことを言われ、俺はその場でうんこを高値で買い取ってもらった。引き換えに渡された小切手にはとんでもない金額が書かれている。
「これなら一生遊んで暮らせるぞ」
俺はウキウキしながら宝石店を出た。
しかし店を出た瞬間、俺は大柄な男達に囲まれ、そのまま捕まって車の中に無理やり押し込まれてしまった。
車内で俺に男の1人が拳銃を突きつけた。
「大人しくしろ」
「ひぃ、命だけは! お金ならいくらでも……」
俺が小切手を差し出すと男達は笑う。
「そんなものいらん。俺達は既に金の卵を産むガチョウを手に入れたのだからな」
「な、なんだって?」
俺は男達のアジトに連れて行かれ監禁された。以来俺はオマルだけが置いてある殺風景な部屋で暮らしている。俺は毎日食事をし、うんこをし、部屋にある差出口から奴らにうんこを渡すだけの生活をしている。一応食事は好きなだけもらえるがうんこをするために必要なのだから当然だ。
いつまでこんな生活を続くのだろうか。俺のうんこ価格が暴落すれば返してくれるのだろうか。いや、用済みになった俺なんて多分殺されてしまうだろう。そうなるといつまでの俺のうんこが高値であることを祈るしかない。そうすることしか俺にはできないのだった。
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