男子バレー

 ある日、職場で課長が困った顔をして、俺に声をかけてきた。


「私的な事で悪いんだが、頼みがあるんだ」


「どうかしたんですか課長」


「君は運動が得意だったよね。私が所属している男子バレーチームに参加してくれないか? 3ヶ月後に大会があるんだがメンバーが足りなくて困ってるんだ」


 確かに俺は運動が得意だ。それに学生時代はバレーボール部に所属していたこともあるのでバレーには自信ある。なのですぐに返事をした。


「いいですよ」


「おお! いいのかい。よかった。なかなか参加してくれる人がいなくてね。じゃあとりあえず明後日土曜日の夕方、市民体育館で練習があるんだけど来てもらえるかい?」


「わかりました。何か用意した方がいいですか? シューズとか」


「ああ、大丈夫。その辺りはこっちで用意しておくから。よろしく頼むよ」


 課長は上機嫌。俺もバレーの実力を見せつける機会ができて楽しみだ。久しぶりに暴れてやろう。


 そして、土曜日の夕方。俺は少し早めに集合場所の市民体育館に行った。まだ誰もきていないようだ。


「おーい! 待たせたね!」


 背後から課長の声がした。それと同時に何人かの足音も聞こえてきたので、他のメンバーも集まってきたのだろう。


「あ、課長。こんばん……」


 振り返って挨拶しようとした俺は課長と他のメンバー達を見て絶句した。




 課長を含めたチームの全員が、バレリーナの白いチュチュを身に纏い、衣装をヒラヒラとなびかせながら、俺に近づいてきたのだから。

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