俺は異世界のありきたりな展開に飽きた。

@shin5216

第1話 俺の異世界召喚はあるあるに満ちている

暖かい日差しが今日も部屋に差し込んできた

ポカポカ陽気で清々しい朝が来た。


パチンと指を鳴らすとティーポットは

ふわふわと浮き上がり、意思があるかのように

カップに美味しい紅茶をいれた。


さて、とひとこと放つと

暖かい紅茶を飲むために青年はしっかり

のびをしてベッドから起き上がって

椅子にしずかに腰をかけた。


「はぁ…。」


ひと口紅茶を口にするとため息をつく。


紅茶を半分ほど飲み終えると

もう一度指をパチンっと鳴らす

すると今度は大きく窓が空いた。


大自然の風が爽やかに部屋に流れてくる

今度は大きく深呼吸をした。


「爽やかな朝!美味い紅茶に美味しい空気!

異世界最高〜!!!」


そして彼はカッコつけながら

おもむろにさらに指を鳴らすと

鏡が飛んできて彼の顔の前でふわふわと止まる。


「異世界召喚されるとイケメン特典が基本だよな!誰だよこのイケメン!!!いや、俺だよ!!はっはっはー!」


はたから見たらとてつもなく怪しい言動や行動に

見えるがこの時、彼は満喫していた。

【異世界召喚ライフを!!!】


何を隠そう、この男異世界召喚をされ

この世界にやってきた

ラノベ、漫画アニメ大好きの普通の高校生である。


「あの日からもう何日経つんだろうな…。」



あの日はいつも通りの学校帰りだった…

俺、桜田 修治(さくらだ しゅうじ)は

最寄りの本屋に立ち寄りラノベ漁りをしていた。


「うわ…また異世界ものでこの展開か…。もうさすがに飽きた展開ばっかりだな。」


俺は周りから見たらラノベ評論家ぶってる

厨二臭いガキだったろう。


しかし、だとしても俺はこんなにありきたりな

展開ばかりにもう飽き飽きしていたんだ。


なにか読みたいって思えるいい本はないかって

漁っていたらとある本が目に飛び込んできた。


【君はこの世界に満足しているか…。】


いや、全然満足してねーよ!!!


学校では教室の済でラノベを読み

チー牛仲間なんて揶揄され集まった友と

アニメ談笑!!

そいつらが集まらなくちゃ俺は机に伏せて

寝たフリの毎日!!


そりゃアイツらと話すのは楽しい!

でも違う!違うんだ!!


俺はもっと熱い青春でもいい!!

甘酸っぱい青春でもいい!!


とにもかくにも陽キャのヤツらが羨ましい!!

何でアイツら俺と同じ現代にいるのに

皆主人公みたいなの!?不平等すぎないか!?


わかるか!?机くっつける場面で数センチ

離される俺の気持ちが!!


あの少しの隙間が俺には深い谷底にすら思える…

アニメの主人公なら難なく飛び越えるか

仲間が先で落ちそうになっても手を差し伸べて

引き上げてくれるだろうそんな溝だが俺には違う!

なぜなら俺には引き上げる仲間も飛び越える力もない…。


くそ!!


この本読んだら満足する方法でも書いてあるのか!!

いいだろう読んでやるよ!

この本を読んで薔薇色の人生歩んでやんよ!!


っていう勢いで購入してしまった。

たぶん2、3行読んだら絶対飽きて読まなくなると

わかっていながらも…


そんなことを考えながら時折ため息をついて

帰宅した。


ある程度普通に勉強して、ゲームして

深夜アニメの録画を見たあと

俺はその本を開いた。


読み始めて5分も経たない間に俺はすっかり

寝落ちしてしまった。


その時微かにその本の文字が光って

形を変えていくように見えた気がした。

【I'll take you to a world where you'll be content.】

きみが……満足する………せか……。

視界がぼやけて意味が分かる前にもう眠っていた。


ハッと目が覚めると気づいたらこの部屋って

わけだ…。最高かよ…


そんなわけで修治はこの世界でのんびりと

仲間はいないがのびのびした異世界生活を

満喫していた。


家を出て歩きながらポケットの中身を見る


「異世界あるあるその1!何故か持ってるお金!」


修治はそう呟きにやにやしていると

木が生い茂る道の端から数人

ガラの悪そうな男たちが現れた。


「おいおい兄さん〜羽振りいいね〜!」


「オイラ達にその金わけてくれないっすか〜!」


しかし全く動じずむしろにやにやしながら

呟いた。


「異世界あるあるその2!なぜか異世界の言語が理解できるし俺も喋れる!」


グッと親指を立てながらカメラ目線ふうに

誰かに伝えた。


「何わけわかんねぇことごちゃごちゃと!!」


「とっととその金寄越せ!!!」


数人で一斉に修治に襲いかかってきたが

全くものともせず修治は魔法で

そいつらを吹き飛ばした。


「な、なんて、化け物みたいな魔力なんだ……」


「ひ、ひぃ〜」


そういうと盗賊達は足早に逃げ去ってしまった。


「異世界あるあるその3!安定の召喚者チート性能!」


異世界あるあるを説明しながら

難なく街が見えてきた。


街を歩いていると街の女性がヒソヒソと

話しているのが少し聞こえてきた。


「ね、ねぇ見慣れないけどあの人……」


「ほんとに…超かっこよくない…?」


異世界召喚後はイケメンでオマケに筋肉も

ある理想的細マッチョになった修治は当然

女性からの評価は高かった。


調子に乗って、女性の方を向くとおもむろに

微笑んでみせた。


「キャー!!!!!」


叫び声を上げるもの、失神してしまうもの

反応は様々だが現世ではとても考えられない

光景だった。


「あぁ…現世にいた俺に今の光景を見せてやりたいよ…」


涙ぐみながら、ふと現世のことを思い出していた。


俺が女子に近づいた反応も同じ

キャー!だったけど意味が違った…。


「キャー!何で寄ってくんの!」


「アイツ絶対あんたのこと舐めるように見てたよ」


「げっ…気持ち悪ぅ…」


こんなんばっかりだったな…グス…


過去に嫌悪し現在に感動しながら街を歩いてると

新しい反応があった。


「おいおい!兄さん!山賊に身ぐるみ剥がれたのかい?なんて格好だよ!」


そう声を掛けてくれたのは如何にもな

イカつい男だった。


「剥がされてないわ!!ってか盗賊はぶっ飛ばしたし、あとこれは寝巻きのTシャツと短パンっていう動きやすさNo.1の装備だ!」


「悪い悪い…!見慣れない服装だからついな!そんな装備で盗賊をぶっ飛ばすなんて…あんたさては冒険者かい?」


ふんっとスカした顔をしながら修治は応える。


「わかればいいんだよ…。あと俺は冒険者なんて異世界でありきたりなことはしないさ…」


「冒険者じゃない非力な男がそんなこと

できるわけがないだろ。」


「俺は魔法が使えるからな。決して非力では無いないぞ。」


「魔法?世界でも精鋭しかつかえないとされる魔法が冒険者でも国直属の兵士でもない兄ちゃんに魔法が使えんのかい?」


その言葉にフフンと笑うと修治は

カッコつけて呟く。


「だったら見せてやるよ俺の力…。あんたさ…」


「なっ、なんだよ?」


「武器、防具屋だろ?」


イカつい男は目を丸くして驚いて応えた。


「店は近くにないのに兄ちゃんよくわかったな!?」


「みたか?これが俺の心を読む魔法!」


まぁ、そんなものは無いんですけどね。

と心で考えながら


「異世界あるあるだからわかるんだよな。」


「はぁ?」


男は不思議そうに修治を見つめた。


「あ、いやなにこっちの話だ!気にするな!」


何言ってるんだ?という顔をしていたが

まぁいいかと男は話を続けた。


「とにかくそんなしょうもない布っきれじゃ大変だ。うちの店にきな!」


「いや、マジで異世界の武器屋はいい男ばっかりだよまったく…」


「さっきからよくわからんが、兄ちゃん名前は?」


「しゅ……」


ここで少し修治は考えた。


いや、待てわざわざあの頃の名前を名乗る必要が

あるのか?

もっとかっこいい名前を名乗っても誰も俺を

知らないわけだしいいんじゃないか??

でも何にする?


レオン…

常闇…

ゼオン…

エドワード…

武蔵…


んー……!!


「刹那(せつな)…。」


修治がふいに出した名前がこれだった。


「刹那?変わった名前だな…。俺はアルバートってんだ!アルでいいぜ!よろしくな兄ちゃん!」


「あぁ…アル、よろしくな…」


「おお!まぁ、何はともあれ兄ちゃんの装備をひとまず見繕ってやるから俺の店に来な!」


「ありがとう…。たすかるよ。」


そうして俺はアルの店へ向かうことにした。


こんな感じで俺の異世界生活が少しづつ

形になってスタートしていく…。


あるあるにツッコミ入れながらまったり

目指せスローライフだ!!


って後ろから目を光らせながら

ずっと着いてくる女性達がいるんですが…!?

本当に平和に過ごせるんだろうか…


【つづく】

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