第5話 気付けば秋通り越して冬

 オレは、レオナルド・ナルシズ・ルシファー。


 新人悪魔だ。


 連載の間が空きすぎて自分のキャラ付けも忘れがちな今日この頃。


 日本は秋通り越して冬。


 寒くね?


 日本には四季があり、夏の後には秋があってそれから冬って聞いてたけど。


 寒くね?


 いつまでも暑いから油断したわ、オレ。


 ぶっちゃけ冬物を買いそびれた……っていうか、暖房を買いそびれた。


 一気に寒くなって、エアコンは冷房から暖房へと一気にジョブチェンジ。


 アパートは安いが電気は使い放題だから。


 電気代考えたら家賃にかけたほうが良くない? ってくらいバンバン動いてるエアコン。


 だけど安いアパートは、すきま風がビュービューはいるから効率が悪い。


 しかも、エアコンって温度を上げても上げても温かさがイマイチだよね。

 

 ぜんっぜん温かくならないっ! 


 オレの生命線、エアコン次第なんだけど。


 いきなり壊れたりしねぇよなぁ、コレ。


 時々、ゴォォォォォォッとか、とんでもない音を出しやがるんですが。


 仕方ないから冬物買ってきたけ。


 慌てて買ったせいか、オレのセンスのせいか、コレがチョーダサい。


 なんだろなぁ、セーターはモッコモコだし、ズボンはシャカシャカいうし、ダウンジャケットは蛍光色が目に痛いんだが。


 あまりの寒さに動揺してたんだろうなぁ、オレ。


 なぜこんな服を買ったんだろう?

 

 と思っているオレの前にいるのは、アパートの隣に住んでる日向まひるさんだ。


 いまは午後六時半なんで、お外は真っ暗ですけどね。


 相変わらず真っ黒でサラサラツヤツヤなストレートの髪を肩口あたりで揺らしながら、まひるさんは胸を揺らした。


「あのコレ、わたしが作ったおでんです。よろしかったら食べてください」


 胸が揺れたのはついでだ。


 おでんの入った鍋を差し出した拍子に揺れただけだ。


 深い意味はない。


「あっ、どうも」


 オレは湯気立ち昇る鍋を受け取った。


「あの……レオさん、寒そうですね? 暖かい地方から引っ越していらしたのですか?」


「あぁ~……はい」


 地獄は業火がごうごうと燃えてるからね。燃え滾っているからね。


 全然関係ないけど、燃え滾るって表現は誤用か誤用じゃないか論争があるらしいね。


 まぁ、どっちでもいいけど。


「あの……コタツは使われてますか?」


「コタツ?」


「あ、やはりご存知ないのですね」


 日向まひるさんがウンウンとうなずくたびにサラサラツヤツヤストレートな黒髪が肩口あたりで揺れている。


「日本にはコタツというものがあります。ストーブもいいですけど、コタツはいいですよぉ」


 と、教えて貰った。


「あ、どうも」


 オレ、ストーブも知らなかったけどそっちはさすがに言えなかった。


 だって地獄は業火がごうごうだから、火をたく必要がないんだよっ。


 でも、それを言っちゃうとオレが地獄から来た事から説明しなきゃいけなくなるからね。


 それは問題あるだろう?


 賢く立ち回ったな。さすがオレ。


 オレは自分の対応を自画自賛しながらおすそ分けのおでんを食べた。


 おでんって美味いよな。


 特にタマゴと大根。


 体も温まる。


 そして翌日。オレはお隣さんお勧めのコタツとやらを手に入れた。


 これはいいね。


 コタツは天国。出られない。


 でも、コタツって魔界とか魔境とか言われてもいるよな。


 魔界は、こんなに心地好くないぞ、と、思ったけど。


 中の臭いを嗅いで、魔界と呼ばれる意味がわかったような気がした。

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辺境の地である人間界に追放された新人悪魔は日報にダラダラと愚痴を書く 天田れおぽん@初書籍発売中 @leoponpon

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