第12話1月6日『牛丼チェーンでの再会』




「ユキノブはこないのかい?」


「連絡してないっすね」


「そ」


 なんだよ。

 温泉に行けなくなったことが発覚した後、別に温泉に行く予定はなかったが、俺とぽっぽは二度寝して、結局起きたのは12時過ぎ。そこからセイコさんとぽっぽがうちに来て勝手にゲームしてる。


「ホクサイもやる?」


「やんな――――やる」


 断る理由もない。


 やっているのはファミリー対戦アクションゲーム『スマートシスターズ』。

 

 みなさんご存知の通り、俺、葛飾北斎はニートである。

 ニートは普段何をしているんだ?という質問、よくされます、はい。大半の引きニートはSNS、アニメ、ゲームなんかをしていると思う。これは不確実。なぜならニートの人脈はゼロに等しいから。ニートは他のニートが何してるかなんて知るか。


 話を戻そう。俺はこのゲーム、ガチで強い。大抵の人には負けないだろう。


 ということで目の前の二人をぶちのめしてやろうではないか。

 


◇◆◇◆◇



 黄色のネズミが走る。

 敵は体の大きさが倍ほどあるゴリラ。相性はクソ有利。負けは許されない。コンボを繋ぎ撃墜――――はできなかった。見たこともない動きをしたゴリラに地面に奈落に突き落とされあっけなく死亡。


 ボコされた『黄色ネズミ使い』俺。ガッツポーズをするセイコさん。


 この人馬鹿強い。


「や、やってたんすか?」


「初めてだよ」


 まじか。結構悔しい。


「っていうのは嘘でめちゃめちゃやり込んでた。ホクサイもかなりやってるでしょ?」


 セイコさん楽しそう。


 あとで勝てるように対策しとこ。



◇◆◇◆◇


 

 結局ダラダラしてたら1日が終わっていた。現在1時。セイコさんとぽっぽも起きてる。完全に昼夜逆転。


「腹減ったな」


「お腹すいた、ホクサイ」


「だな」


 棒がついたアイスをみんなで三箱ほど食べて朝昼を過ごしたが、かなり腹が減った。


「何食べたい?」


「肉が食べたい」


「肉、いいね」


 俺が払える肉――――牛丼。


「牛丼行くぞ」


「いいね」


「いこ」



◇◆◇◆◇



「並三つ」


 座ったのはカウンター席。左から俺、ぽっぽ、セイコさんの順。


 やはり白髪は目立つな。家にいた時は慣れで気づかなかったが、店で見ると異様だ。


「ホクサイ、水」


「はいはい水ね」


 入店してから秒で水を飲み終わるぽっぽ。

 俺は左に置いてあったウォーターピッチャーに手を伸ばす。



 ふと、俺の左に座っている人が目に入る。



「あ」



 白髪だった。身長は俺と同じぐらい。ぽっぽよりはデカいな。なぜ今まで気づかなかったのか。もしかするとぽっぽもあまり目立っていないのか。



「あ、ホクサイさん。ぱっぱです」



 マウンテン、山で出会ったぽっぽ姉妹の長女ぱっぱがそこにいた。



 しかし、衝撃は連続する。俺はすでにぱっぱから意識を逸らし、もう一つ隣に座っている男に注目する。



「ニートじゃねぇか」


「――ホクサイか。」


 そこにはイグニートがいた。

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