第10話1月5日『ヒロインの父に謎の告白をしてしまったw』


 ラブコメとは。


 恋愛作品のジャンルの中の一つ。恋愛物とはギャグが多いか少ないかほどの違いしかない、と思う。


 だから、今、この現状はラブコメに違いないだろう。俺はユキノブに恋をしてる。デート的なものもした。うん、これはラブコメだ。


「だよな、ぽっぽ」


「え?あ、そうだね」


 俺たちは今日本で作戦会議をしている。会場は俺の部屋。議題はラブコメとは、ではなく俺の天賦について。


 日本に帰ってくるのは非常に簡単だった。ぽっぽに頼んだら魔法陣が出てポワーンみたいな?一瞬だった。山にいたはずだったけどセイコさんの部屋に転移してよかった。山を下るのはきつい。土足で転送されたからしょうがなかったが、部屋を汚したのは申し訳ない。掃除したの俺だが。


「ぽっぽ、天賦の使い方」


「あ、そうだった」


 アイスを食べ終えた後もスプーンを口の中で転がしているぽっぽを現実に引き戻し話は再開する。かわいいやつだ。


「天賦は魔力の爆発みたいなもの。たぶんホクサイは叫んだ時に魔力を全身でほぼ最大出力した。それが天賦の使い方。一気に体からボンってするの」


 つまりメラゾーマではないと。悲しいような安心したような。


「それでねホクサイ、天賦は日常ではまったく使えない。ほとんどが戦闘向き。あれだ、宝持ち腐れってやつだね」


 酷いこと言うなこの異世界人。


「そういやウェルカヌスって神は火を司るんだよな?ググってみるか」


 『ウェルカヌス』を検索。


 ローマ神話ね。


「ホクサイもこの神様たちから力をもらってるわけでしょ?」


 ユキノブがタブレット端末を覗き込んでくる。


「信じられない。なんで日本人に力与えてんだよ神様は。バカなのか?」


「バチ当たるぞ?」


 セイコさんがムッとする。


「ごめんなさい」



◇◆◇◆◇



 異世界に行くと時間がよくわからなくなる。現在1月5日1時。おそらく転移するときに数時間消費するのだろう。


「そう言えばユキノブ、家帰んなくていいの?」


「――――やば!」


 忘れていたようだ。

 無理もない。いろんなことがありすぎた。転移のタイムラグのせいもあるだろう。


「とりあえず、家に連絡しといた。考えれば2日帰ってないのか。やばいな」


「家出る時なんて言ったの?」


「ホクサイとデートするって言った」


「――――」



 やばいな。

 娘が男とデートに行って2日帰ってこない。




 絶対やってると思われてる。



 

「家まで送るよ」


「ありがとホクサイ!」



◇◆◇◆◇



 ユキノブの家まではかなり近かった。歩いて5分くらい。


 ピンポーンと言う音を鳴らし、


「ホクサイです!」


 真面目な顔をレンズに向ける。親にはしっかり説明しよう。


「そこは『葛飾です』でしょ」


 ユキノブは笑っているが俺としてはかなりやばい状況。そんなこと気にしてられない。



 ユキノブ父が出てきた。



「ただいまパパ」


「――おかえり…、君が、ホクサイくんかい?」


「はい、ホクサイです。すみませんでした!」


「なぜ謝る」


「え?」


 怒られると思ってた。普通怒られるよな?あれ、どうなんだろう。社会に出ていないとこういうシチュエーションに弱い。


「無事帰ってきたのは見てわかる。それに、ユキノブが楽しかったのならそれでいいんだ」


 美少女の父上は優しい笑顔をむけてくる。この親子は非常に似ていると思った。


「じゃあね!ホクサイ」


「気をつけてね」


「はい!さようなら」


 ユキノブが家の中に入り、ユキノブ父がドアに手をかけた時、俺は素早くユキノブ父に近づく。


 不思議そうなユキノブ父に対し俺は小声で――――、



「――俺はまだ童貞です」



 囁いた。

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