第5話1月3日『山で異世界人見つけたw』




「『天皇誕生日』『ゲキムズ!不可能任務』『077接着剤最強』『うさぎの戸締り』…」


「どれ見る?」


「えー!あ!これなんかどう?『ミミズ人間』!」


「――それにしよう!」


 おい大丈夫か?

 まぁいい。一緒に見るから面白いはず。そもそも映画を楽しみに来たのではなく、一緒にいることを楽しむのだ。


「ポップコーンいる?コーラのサイズは?」


「うーん、腹減ってないからジュースだけにするわ。コーラはL!」


「りょーかい。買ってくるよ」


 どうだ!

 所持金約29000円の俺の行動力は俺史上最強だぞ?


「お会計860円になりまーす!」


「は、はい…」


 え?マジかよ高い!高すぎるって。コーラだよ?氷とか入ってるからあんま量もないのに…。

 俺は小学生の時使ってたナイキの財布から千円札を取り出した。


「ありがとうねホクサイ!」


「溢れるから叩くな!」


 背中をバシン!と叩かれコーラが少し溢れた。


「もう始まるから行こっ、ホクサイ」


 Twitterで『奢る派』と『割り勘派』の対立。俺は『割り勘派』だった。

 しかし、リプ欄によく出没する『奢りたい人には奢る派』にシフトしてしまった。『奢りたい人には奢る派』の人は、経験豊富なのだろう。俺は今日から『奢りたい人には奢る派』の人間だ。『割り勘派』の諸君、さよなら。そしてありがとう。



◇◆◇◆◇



 緊急報告!緊急報告!


 クライマックスシーンで隣にいる美少女が大泣きしてます。なんか俺の袖を掴んで泣いてる。

 ミミズ人間。これが思った以上に感動だった。最初はグロいだけのブルーになるやつかと思ったのだが、グロさゼロでただのめちやめちゃ感動する話。ミミズ人間最高か?

 

 それから20分くらいして、映画は終わった。


「ミミズよかったね!ホクサイ!」


「めっちゃよかった!」


 やはり好評だ。ユキノブの目は赤くなっている。どんだけ泣いたんだよ。


「次何する?」


「えっと――――」


 ラーメン、映画と来た。現在午後5時。


「じゃあさホクサイ!この後そこら辺の店回って、帰りに山まで行って夜景見ようよ!」


「山!マジ?山ってマウンテンだよね?」


「そうマウンテン!電車とかバスとか使えばホクサイでもマウンテンぐらいいけるよ!」


「よし、マウンテン決定な?じゃあなんか買いに行こう」



◇◆◇◆◇



 ユキノブの服を選んでいる。試着室の前でユキノブが出てくるのを待ってる俺。このシチュエーションはラブコメでよく見た。

 ちなみに、今の俺の服装は昨日姉貴と準備した服に灰色のコート。ユキノブは俺の装備にコートを色違いにしただけ。ほぼ一緒。後マフラーか。そんだけだった。


「ホクサイ!どう?」


 試着室から出てきたユキノブはダボっとした灰色のよくわからないやつにヒラヒラした黒のスカートを着ていた。


「かわいい!」


 あれ?言ってよかったのか?これはハラスメントか?

 ユキノブは顔を少し赤くして「よ、よかった!まぁ、高くないしね!買ってこー」とか言って直ぐにカーテンを閉めてしまった。



 服を買ったあと、少しぶらぶらして時間を潰して電車に乗った。


「ホクサイ電車好き?」


「別に電車本体にあんまり興味ないけど、乗ってるのは好き。ホームの音とか雰囲気とか」


 電車が混んでてお互いに座れなくなって、揺れた拍子に――――なんてことはなく普通に座れたし、なんならガラガラである。


「ホクサイ趣味は?」


「えー、ゲーム、アニメ、漫画くらいかなー」


 本当のことを言った。偽って『お菓子作り』なんて言って笑われるよりいいだろう。比較的話も盛り上がりやすいのでは?それと『絵』は結構前に消滅した。


「いいね!私も結構アニメとか見るよ!」


 勘違いするな、俺。女のこれはだいたい結構ではなく見たことある程度なのだ。これで『マジで!?』とか喜んでヲタクのユニークスキル『早口解説』を発動したらゲームオーバー確定。


「へぇ、意外。どんなの見るの?」


 これが最適解!軽く驚き一応の確認。


「一番はやっぱリゼロだよね。3期マジでよかったね。あ!ジャンプならナルトが一番好き」


 マジか!こいつわかってる!


「リゼロいいよね!あれ超えるアニメはない」


「岡田斗司夫が紹介してたの見て見てみたらやばおもろくてさ!」


 正直岡田斗司夫は好きじゃないが、ユキノブがリゼロ見てたとは予想外すぎる。


「ナルトで一番好きなキャラは?」


「穢土転生されたサソリ」


 こんな会話をしてたらあっという間に山に着いた。



◇◆◇◆◇



「ホクサイこっちこっち」


「足元に気をつけろよ?てかどこまで行くんだ?」


「もう少ししたら丸い広場があって…それで…」


 ユキノブの口が止まる。

 その原因は明確だ。100メートルほど先青白い光が広場を照らしている。


「何あれ!いこうホクサイ!」


「おい!待て!」


 当然ユキノブは待たないで走り出すので俺もそれを追いかける。


 近づくと青白い光を七人の人間が囲ってみていることがわかる。


「おーい!宇宙人ですかー!」


「何言ってるんだ!もし宇宙人だったら殺されるかもなんだぞ!」


 ユキノブの声に反応したのか青白い光の手前にいた一人がこちらに向かってきた。


「ほら!殺されるよ!ユキノブ!」


 向かってくる影は異常に速く、今から逃げても無駄だと直ぐわかる。影とユキノブの距離がどんどん縮んでいく。

 影がユキノブの前止まる。


 しかし、影はユキノブに一礼すると俺の方へ来た。


「え?」


 俺はスマホの懐中電灯を起動し、影を照らす。


「ぽっぽ、何してんの?」


 影はぽっぽだった。


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