第4話1月3日『初デートのラーメン屋が最高すぎたw』




「ホクサイ!待った?」


「めっちゃ待ったわ」


「ごめんごめん。でもねホクサイ、集合時間一時間前だよ?」


「めっちゃ待ったわ」


「いこっか!」


 俺とユキノブはラーメン屋の前で待ち合わせをしていた。俺はラーメン屋の前に二時間いたわけだ。自分でも狂ってると思う。


「へいらっしゃあー!ユキノブちゃんじゃあねぇかああ!」


 テンションが高い店主の声が店内に響く。

 この店を選んだのは俺ではない、ユキノブだ。LINEでラーメン屋のマップのリンクが貼られた時は驚いた。まぁ俺としてはシャレオツなカフェなんかよりラーメンの方が断然好みである。そこを気を遣われたなら本当に申し訳ない。


「味噌ラーメン二つ」


「味噌ラーメン二つぅ!」


 店の中は店主しかいないはずなのだが、謎に声を上げる。大丈夫だろうか。


「ここでよかった?」


「めっちゃイイ感じじゃん。味噌ラーメン好きなんだよ俺」


「でしょ?めっちゃイイ感じなんだよねこの店!周8で来てる!」


 周8。周8!週に8回。ちなみに一週間は7日間である。

 本当かと店主おっちゃんを見るが頷いているので本当なのだろう。それはそうとして――――、


「こういう時どんな会話したらイイんすか?」


「どうだろうなー。私も初めてだからねー」


「は!?」


 は!?どういうこっちゃ。初めてというのは『こういう時』の事。俺が言った『こういう時』は男女二人、異性と食事に来た時のことだ。となると――――、


「彼氏いたことないの?」


「ないよー」


「は!?」


 は!?彼氏がいたことないだと!?まさか百合か!って違う違う。つまり――――、


「神はいたわけだ」


「神?いるのかねえ?」


 神はいると思う。


「へい!お待ちいイイ!味噌ラーメン二つ!アンドおまけのギョーザとチャーハンじゃあ!」


「ありがとう歌川さん!」


「あざっす!」


「イイよイイよ礼はいらねぇ!目の前でこんな甘酸っぱいものタダで見させてもらっとんじゃ!せめていっぱい食ってくれや!」


 マジでイイ人か!『歌川ラーメン』最高だ!

 ラーメンはマジで美味い。これは周8で来てもおかしくない。


「そういえばユキノブは大学生だよな?どこ行ってんの?」


「あ!いってなかったっけ。東大受かったんだよ」


「マジかよすげええええ!」


 やばいな俺東大生とラーメン食ってる。あとギョーザとチャーハン。



◇◆◇◆◇



 10分しないうちに二人とも完食。

 ラーメン、まず麺だ!しっかりコシがある中太の縮れ麺。濃厚なスープ。味噌の濃さが冬の寒い日にはピッタリだった。トッピングされていたバターが溶けてマイルドな風味も素晴らしいかった。

 そしてギョーザ。これは皮がうまい!絶妙な厚さ、大きさ。中の餡の味を最大限にまで引き出す魔法の皮だ。餡には少量の生姜が含まれているのか新しい感覚だったがこれがすごかった。肉汁で酢醤油がすごいことになっている。

 最後にチャーハン――――じゃなああああああああい!


 何してるんだ俺は。この後の予定、ゼロだよ!これで帰るのはやだ!


「お、おいしかったな!」


「でしょ?また来ようよ!」


「この後どうする?」


 言ったあああああ!神さまよろしく頼みますわ!


「映画とかどう?お腹いっぱいだし、あんまり走ったりできないでしょ?」


「映画あ!?」


「どした!」


「行こう!映画に行こう!」


 俺とユキノブは歌川さんに『ご馳走様』と『ありがとう』と『また来ます』を言って店を出た。


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