第3話1月2日『姉貴』
1月2日。はちゃめちゃな元旦の翌日、俺は姉と買い物に来ている。
「服買うんだっけ?どエロいのにしよー」
「しねぇよ!バカか!」
俺が欲しいのはフツーの服。俺みたいなやつがファッションとか気にしてるとも思われたくないし。フツーのでいいのだ。
ところでなんだが――――、
「フツーの服ってなんだっけか」
「ジーパンにTシャツ?持ってんじゃん。父さんにでも借りれるしね」
うーん。服問題やばいぞ全然わからん!と、思ったのだが――――、
「てか明日二人で何すんの?」
「知らん」
「平気なんそれ?壺とか買わされるんじゃね?LINE見せてみ」
「はいよ」
渡した。
神に財布を奉納したらなんか人生薔薇色になりつつある今、壺への認識が変わってきている。今まで宗教に興味などなかった俺だが、こんな奇跡体験をしのだ。信じるのが当たり前。安い壺なら買おう。
明日二人で買いに行くのはどうだろう。デートとしては結構テンプレなのでは?うんそうしよう。明日は服を買いに行く。
「することなくなっちゃったな。なんか食べる?フードコート」
「私はいらん。奢ったげるからいこー」
◇◆◇◆◇
注文したのはたこ焼き。たこ焼きは最高。たこ焼きって最高なんですわ。
「弟よ」
「なんでしょう!」
「明日はしっかりしたレストランとかカフェとかに行けよ?フードコートとか金のない中学生みたいだし」
「でも実際俺金ないんよ。昨日財布投げちゃったから」
「そりゃしゃーないわな。お小遣いあげるよ。私、金持ちだから」
そういって姉貴はたこ焼きのお盆に一万円札三枚、三万円を置いた。
「さ!さんまえん!」
「秋刀魚園だねー」
たこ焼きが熱くてうまく話せない。俺は三万円をゲットしたのだ。お年玉を遠慮したのを後悔し始めていたが良かった。
「帰るか弟。明日の準備するぞ弟」
「ありがとう姉貴」
◇◆◇◆◇
母の若い時履いていたスキニーのジーパン。ガリガリが役立った。そしてダボっとしたTシャツにカーディガン。カーディガンは響きがガーディアンみたいで大好き。
いいのではないか!イケイケだ!いけるぞオレェ!
確認のためベッドに寝っ転がる姉貴を見るとサムズアップをぶん回してる。
「サンキュー姉貴様」
「いいってことよ。じゃあ私は帰るよ」
涙が出る。
「いつも見てるぜ弟よ。気が向いたらまた絵描きな?」
「わかったよ。気が向いたらな?」
二十歳にもなって姉貴と抱き合うのは普通は異常だろうな。フツーは。
「頑張る」
「じゃあね。泣きやめよ?寂しかったらLINEできるし!またお盆で来るからさ」
姉貴は部屋を出て行った。
◇◆◇◆◇
葛飾北斎には葛飾応為カツシカオウイという2歳年上の姉がある。いや――――、
姉がいたのだ。
ホクサイが17歳の時にオウイは電柱に登って落ちて死んだ。
とんだバカな姉だった。
ホクサイがニートになった原因はおそらくそこにあるのだろう。
だから彼の家族はあまりホクサイを責めないのだ。
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