第9話 天使の誕生日

それから数日間、四人でひたすら折り紙花を折った。

ひまりも難しそうにしながらも、必死に頑張っていた。バラの花が綺麗に丸められなくて、ふてくされる姿もかわいかった。


そしてその間も、ひまりは毎日ひとみの病院に顔を出してくれていた。ひとみも本当に嬉しそうにしていて。やっぱりひまりが来ると本当に体調が良くなるらしい。不思議だが、やっぱり友達の力は偉大なのかな、と思ったり。


そんなこんなで、ひまりパパの誕生日の前日。


「かんせ~い!」

「やったな、ひまり!」

「うん!」


無事に折り紙花束が完成した。大きさがまちまちの、よれたり曲がったりの花もちょいちょい混じっているが、それがいい味を出している。その出来映えに、ひまりも満足そうだ。指に針を刺しながら作ったお守りも、紙メダルも、手紙も準備OK。これ、喜ばない親はいないだろ?うん。


それと。今日はもうひとつ。


「ひまり、お誕生日おめでとう!」

「僕たちからのプレゼント!」


優真翔真がやはり折り紙で作った向日葵の花束をひまりにプレゼントする。何とはなしに、ひまりの誕生日は盛大におうちでパーティーでもするのかと聞いたら、そんな予定はないと言っていたから、内緒で三人で作っていたのだ。ケンカしていても、そこはダメじゃないか?親父さんも。と思わなくもないが……。父親って、そんなに気遣いもできない生き物なのか?


そもそもうちのは話にならないクズだし、参考にならないからな、何とも言えないのだけれど。


「わっ、ありがとう……!ひまわり、すごい、たくさん!かわいい……!お兄ちゃんたちが作ってくれたの?」

「こんなことしか、やってあげられないけどな」

「ううん、すごくうれしい……!!」

「ひまりちゃんの名前、向日葵をもじったのかと勝手に解釈したんだけど」

「ひまりも向日葵みたいに元気でかわいいしな。あってたか?」

「うん、うん、あってるよぉ……!うれしいよお!」


大事にする、と泣き笑いで喜んでくれるひまり。宝物のように、両手でそっと花束を抱きしめてくれている。本当に天使みたいだ。


「喜んでくれて良かった。それと」

「じゃーん!川村家特製ケーキでっす!」

「まあ、ただのホットケーキミックスで作ったケーキなんだけどな」


ホットケーキミックスと、高くない生クリームと、缶詰フルーツのケーキ。庶民丸出しのケーキだけど、愛情はたっぷりだ。


「ひまりの口に合うか不安だけどな」

「そんなことない!今までで一番うれしいお誕生日だよぉ……!」


ひまりはもはや号泣している。

想像以上に喜んでくれて、俺たちも嬉しいやらちょっと恥ずかしいやらだ。


三人でひまりをなだめて、ケーキのロウソクの火を消して。切り分けて。

庶民ケーキを今までで一番おいしいと、口いっぱいに頬張るひまりを見ていると、忘れそうになっていた幸せを感じる。


同時にやっぱり、親父さん何やってんの、って思っちまうけど。


始めは乗り気じゃなかったし、今も迷いがないわけじゃないんだけど。


ひまりのパパに一言物申したい気持ちも、俺に生まれて来ている。だって、こんなに健気な娘だぞ?ちょっとおませさんだけどさ。いろいろダメだろう。


ともかく、明日。


緊張もするけど、兄ちゃんたちも頑張るからな!ひまり。


一緒に笑えるように。


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