第8話 仲直り計画

「では、ひまりとパパの仲直り作戦を考えましょ~!」


「優真、楽しそうだな。あ、ひまり、今日もお見舞いありがとうな。ひとみも喜んでた。『ひまりちゃんといると、体が楽なかんじなの』って」


「ほんとに?よかった!」


初夏の、まだ爽やかな土曜の午後。

多くの家族連れが遊んでいる。


そして俺たちは昨日の約束通り、公園に集合して話を始めたのだけれど。


「何だか、視線が痛いな……?」


「妹いても、男三人は目立つのかなあ?」


「今、変なの多いしね」


三人で話し合った結果、うちのアパートに招待することにした。


「ひまり、うちで大丈夫か?お手伝いさんは?」


「今日は一人で来たの!だいじょうぶだよ」


「そうなのか?ひまりは一人じゃ危ないんじゃないか?帰りは送るからな!」


「うん、ありがとう」


ひまりは一瞬きょとんとしてから笑顔になる。

そこできょとんとしたらダメだろうが、お嬢様!

親父さんにも不穏な影がチラついているのだし。


「ちゃんと分かってるのか?」


ここは、ちゃんと説明を……。


「兄ちゃん、兄ちゃん、早く行こう」

「うん、何だかますます見られてる」


えっ、と思って振り返ると、何人かに不思議そうな顔をされていた。


(俺たち、そんなに目立つ?ひとみも連れて来たりしたけどな……)


何だか変な感じだが、悪目立ちはしたくない。


「よし、帰ろう」


俺らはそそくさと公園を後にして、アパートに戻ったのだった。もちろん帰りながら、ひまりにはきちんと注意した。ひまりはそれを、とても嬉しそうに聞いていた。





「じゃ、改めて作戦会議だね!」

「本当に張り切ってるな、優真」

「話し合いはやっぱり家がいいな。麦茶も飲めるし。ほい、ひまり」

「ありがとう、翔兄ちゃん」


アパートに帰り、さっそく話し合いの再開だ。


「うーんと、まず、ひまりは何か考えているのか?」


まずは本人にやりたいことがあるかだな。


「うんとね、来週ね、私誕生日なの」

「そうなんだ!おめでとう」

「ふふっ、ありがとう優兄ちゃん。でね、次の日1日ちがいで次の日パパなんだ。その日に、プレゼントをわたせたらいいなあって」

「へぇ!いいんじゃない?誕生日に仲直り!」

「ほんと?翔兄ちゃん」

「俺もいいと思うぞ~」


エヘヘと照れ笑いのひまりもかわいい。


「それでね、前にパパにお守りを作ってあげるって言ったから、作りたいと思って。あと、お手紙」

「いいね!あ、それと折り紙で金メダルとかは?それと、花束!」

「あー、ひとみとも作ったな、母の日に。どう?ひまり」


ひとみが折り紙が好きで、俺たち兄弟もずいぶんと付き合わされたもんな。俺たちも自然と腕が上がっている。


「いいかもな。枯れないし、結構キレイにできるもんだぞ。ほら、これ、母の日に四人で作ったんだ」


俺は今年の母の日に、四人で作った花束を見せる。……あの時は、まさかこんな状況に陥るなんて考えてもいなかったな。今思えば、穏やかで楽しい日常だった。


「うわあ、きれい!チューリップに、バラもある!いろいろなお花でかわいい。紙で作れるんだね。これ、みんなで作ったの?すごい!だけど、わたしにできるかなあ」


ひまりの元気な声に、沈んだ思考から我に帰る。

今は、ひまりパパのためにだ。


「ちょっと難しいけど、大丈夫だよ。僕たちも手伝うから」

「ありがとう!優兄ちゃん」

「さっそく1個作ってみようか」

「うん、翔兄ちゃん」


いっぱい作るぞー、と、さっそく折り紙を出してきて折り始める。ひとみが好きだから、たくさんストックがあるのだ。このご時世、100均でもいろんな種類がたくさん売っているので、ありがたい。


うん、今は、ひとみの病院と、ひまりの計画に集中だ。


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