第5話 天使との再会
翌日。
俺は学校を休み、午前中にひとみの小学校への説明や、これからの相談をし、役所に書類を出したり貰ったりしながら手続きを始め、午後に病院に来た。
今日からひとみは更に詳しい検査だ。検査だけでも長期になるらしい。見ている方が辛い。今日は骨髄液を採る検査もしたので、今ひとみは麻酔で寝ている。
「起きて、痛くなければいいな……」
俺はひとみの頭をそっと撫でた。
まだ、俺の手のひら位の大きさしかない。
こんなに小さいのに。検査だって怖いだろうに、泣くのを堪えて頑張っていた。
「翔真も言ってたけど。本当に、俺が変わってやりたいよ」
「お兄ちゃんたち、優しいね」
一人言に返事が返って来たことに、ビクッとして振り返ると、ひまりがいた。
「ひまり?何でここに。一人か?」
「お手伝いさんと一緒よ。下のロビーで待ってもらってるの。実は昨日ね、お兄ちゃんに聞いて心配だったから、お手伝いさんにちょっとおみまいに連れてきてもらったんだ~。だから、お部屋しってるのよ」
「そうか。わざわざありがとうな」
「ううん。ひとみちゃん、がんばったんだね。えらいね」
ひまりも、ひとみの頭をそっとよしよしと撫でる。
そのひまりの顔が、何故だかやけに優しく輝いて見えて……俺は目を瞬いた。
妙に神聖なものを見たような心地だ。うまく言葉にできないけれど。
「……ひまりちゃん?おにい、ちゃん?」
「ひとみ!起きたのか?痛くないか?」
「うん、ちょっと変な感じだけど、だいじょうぶ……へへ、ひまりちゃんによしよしされると気持ちいいよ」
ひとみがふにゃりと笑う。ほっとする。
ひまりも嬉しそうだ。「じゃあ、いっぱいよしよしするね!」と、張り切っている。二人が尊い。
「じゃあ、兄ちゃんちょっと看護士さん呼んでくるから……」
と、言いかけた所でドアがノックされ、優真翔真が部屋に入って来た。
「ひとみー、来たぞ!どう?調子は。辛くない?」
「あれ、ひまりだ。来てくれたのか?」
二人が来ると、ますます賑やかだ。俺は看護士さんを呼ぶために、二人に頼んで部屋を出る。
「優兄ちゃん、翔兄ちゃん、部活は?」
「大丈夫だよ!ひとみの方が大事だもん」
「そうそう。顔見ないと、兄ちゃんたちも心配だからな」
「……ありがとう……」
部屋を出る間際に聞こえてきた、三人の会話。気遣い屋のひとみが、珍しく素直に嬉しそうな顔をして。
そして、その景色を見つめるひまりが、やっぱり神様みたいに優しい、本当に優しい顔でいるのを、俺はまた見た気がしたのだった。
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