ルチルクォーツの物語

 人生のどん底ってあるのだなと思う。世の中見渡せば私よりも最悪な環境にいる人間はいるのだろうけど、私の二十年そこそこの人生ではかなりやばい状況にある。

 新卒で入社した会社が、新入社員研修中に倒産した。そんなことってあるものなのだな。

 唐突に放り出されてしまった私は景気づけに宝くじを買ってみたのだけど、当然ながら当選するわけがなく。

 よくよく考えてみると、くじ引きでさえ参加賞以外に当たったことはなく、バイト先が消滅することもまあまあの頻度であったわけで、決して珍しいことではない。それでも今どん底だと感じるのは、実家を出てだいぶ離れた土地にいるからだ。

 金運なし、商売繁盛とは縁はなし。そうなりゃ仕事の成功なんて望めない。

 

 ――貧乏神は出て行けって追い出されたも同然に上京したんだもんな……そう簡単には帰れないわ。


 自分が貧乏神であることを認めたようで癪にさわる。何かしらの結果を出してから帰郷したいものだ。


 ――私はまだ何も成していない。


 勝負運も今ひとつではあるが、ここは人生を賭けてみてもいいんじゃなかろうか。

 宝くじの結果を表示したままだったスマホの画面を閉じて、仕事を探すことにする。


 ――住み込みの仕事、か……


 家政婦と思われる仕事が目に止まる。住み込みだと職を失ったときに苦労しそうだが、興味が湧いた。

 まずは電話で相談とのことなので、早速連絡をする。聴こえてきたのは男性の落ち着いた声。印象はよい。


「あの、私、そちらの求人をお見かけして電話をかけたのですが――」


 すぐに決まったそのお仕事が、まさか一年間限定の伴侶役だとは思いもしなかった。



《終わり》



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ルチルクォーツの宝石言葉

【金運】【商売繁盛】【仕事の成功】【勝負運】

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