俺氏、本当に大切な事を見せつけられる


「もしかして、お前グレンか?」

 ファーーーのせいで空気が凍り付いてから一拍置き、モブイが確信を付いて来た。


 正直ここで逃げてもいいが、逃げた後にモブイに問い詰められるのは面倒だ。

 というかファーーー言ってしまった時点でグレン・アスフォールですって言ってるようなものだな。

 というか常識的に考えてのっぺらぼうの怪しいローブ被った魔道人形=グレン・アスフォールってならないだろ普通・・・ならないけど、ファーーーが出たしな。

 ファーーーって怖いな。

 もういいや開き直ってしまえ。


「ああ。そうだ。俺がグレン・アスフォールだファーーー」


「やっぱりか、友愛の指輪にした付与魔法の腕前と魔力操作の癖からして、もしかしたらと思ったが・・・」


「いや、モブイそんな所で気が付いてたの?え?普通に怖いというかキッショいファーーー」


「おいおい、失礼だな。大体あんな高難易度の付与術式を組み友愛の指輪を一瞬で改造出来る存在なんて世界でも5本の指に入る錬金術師とかのレベルだぞ。

 色々と間抜けなんだよグレンはさぁ」


「確かにそう言われるとぐうの音も出ないファーーー」


「ねえ、ちょっと待って。待ってください。その怪しい存在がグレン・アスフォールってこと?」

 カタリナちゃんが少し、いやかなり怖がるような目で俺を見つめてくる。

 そんな目で見つめられると少し興奮しちゃうじゃないかって、それは変態だな。

 

「おいおい、悲しいな普通にグレン君って呼んでくれファーーー」


「そ、それは」


「安心しろ。俺は別にカタリナちゃんを恨んだりとか一切していない。むしろ当時現場を眷属達に丸投げしてカタリナちゃんのような不幸な子供が生まれてしまっていることに気が付けなかった俺の落ち度だ。

 すまなかった。心の底から謝罪する。流石に両親を生き返らせるとかは無理だし、あの屑どもを生き返らせるつもりは毛頭ないが、それ以外の望みがあるならば叶えるファーーー」

 一応、俺の本心だ。


「いや、あ、えっと、その。頭をあげてください。もう気にしていませんから。むしろ頭を下げるのは私の方です。ごめんなさい。

 グレンさんは何も悪くないです。むしろ私はアンクル商会に助けられた身です。本当にありがとうございます」


「ああ、多分俺の知らない所でアテナが色々とやってるからファーーー。お礼を言うなら俺じゃなくてアテナだファーーー」


「それでもです。私は真実を知れて良かったです。おかげで復讐に囚われずに本当に大切なことに気が付くことが出来ました。ありがとうございました」

 思いっ切り頭を下げられてお礼を言われると何というか、悪い気はしないが少しむずがゆい気持ちに襲われるな。


「それで?カタリナちゃん何か欲しい物はある?」


「大丈夫ですよ。だって私には皆がいますから」

 最高の笑顔で友達を自分に抱き寄せる。

 めちゃくちゃ絵になるな。

 本当に大切な事か・・・それは仲間だな。


「「「「カタリナちゃん」」」」

 思わず友人3人と一緒に俺も呟いてしまった。


「そうか、それは良かった。嗚呼、本当に良かったよ。何か困ったことがあれば気兼ねなく相談してくれ、なんやかんやで同じクラスメートで俺も友達の一人だからファーーー。また一緒に本の話をしようファーーー」


「グレン君・・・ありがとうございます。何かあったら相談しますね。それと今度私からもお勧めの本紹介しますね」

 グレン君って呼んでくれたな。


「ファーーー」

 最後に片手を上げながら後ろを振り向きカッコよく決めて、意識、魂を元の自分の肉体に戻した。

 その瞬間に魔道人形は文字通り糸が切れたように倒れ動かなくなった。

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