俺氏、モブイのカッコよさに惚れる


「うわぁぁぁぁぁぁぁ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。私は違うの。でも、違うの。私は、私はだって、私は。アアアアアアア」

 

 カタリナちゃん壊れちゃった。

 いや、マジでこれは流石に俺が悪いな。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 正直、俺もここまでエグイ物を見せられるとは思ってなかった。


 というか、お母さんの設定マジで知らんて、ダーネス暗殺部隊第六隊長って誰だよ。

 まあ別に彼の行動を間違ってると思わないけど。ある意味でそれは正当な復讐であり権利なのだから。むしろ俺は肯定をしよう。

 それでも父親の拷問シーンとか、自分の精神崩壊シーンとかマジで辛いよ。


 何というか、ファーーーだな。めちゃくちゃ最悪なまでにファーーーだな。

 便利だなファーーーって言葉。


 でも、この状況どうしようか。


「大丈夫だよ。カタリナ。俺がついてる」

 モブイがナチュラルにカタリナちゃんを抱きしめた。

 何だコイツ。普段は女子にタジタジする癖にこういう時はカッコよく決めるとか。イケメンの具現化かよ。


「モブイ君・・・、あのね。私間違ってたの。ずっとずっと間違ってたの。ごめんなさい。モブイ君。ごめんなさい。ごめんなさい」

 モブイ目線錯乱してて何に謝ってるのか分からないだろ。おそらく実はアンクル商会に逆恨みしてた所とか、モブイ君を自分の復讐の為に利用しようとしてた所に謝ってるんだろうけど。多分。知らんけど。


「俺は大丈夫だよ。だからまずは深呼吸して」


「スーーーハーーー。スーーーハーーー」


「落ち着いた?」


「うん。少し。ありがとうモブイ君」

 涙目でお礼を言うカタリナちゃん、普通に可愛いな。

 何だろう、なんか勝手にラブストーリー繰り広げてんな。別にいいんだけどさ。明らかに怪しい俺(魔道人形)に仲間達の事忘れてね?


「カタリナちゃん、モブイ君。大丈夫?」

 すっかり忘れていたカタリナちゃんの友人が心配そうに声をかける。

 他の2人も心配そうな様子だ。

 何だよ、良い友達、仲間じゃあないか。


「私、私・・・私、知らない方が良いことを知ってしまったわ。ねえ、あの真実って嘘だよな。あの水晶は偽物だよね」

 モブイに縋るように泣きつく。かなり可愛い。


「カタリナ、俺が鑑定したがあの水晶、過去投影の宝晶は本物だ。多分、カタリナが見た物は真実だと思う。

 本当はここで嘘だって言ってあげるのが一番良いのかも知れないけど、それじゃあ前には進めない。真実から目を背けてもろくな未来が訪れないって俺は嫌って程知っている。

 だから辛くても真実を受け入れて前に進もう。大丈夫だ。俺が、皆が付いている」

 カタリナちゃんの背中を赤子をあやすようにさするモブイ。

 しれっと、モブイの重そうな過去が垣間見えた気が・・・まあ、そこは一旦置いておこう。


「カタリナちゃん。まだ仲良くなって日は浅いけど、それでも私はカタリナちゃんの事、親友って思ってるよ。だから一人で抱え込まないで」


「また皆で一緒にお出掛けしましょ?お揃いの服を着てアンクル商会の新作パフェ食べようよ」

 しれっとアンクル商会の新作パフェ食ってるんや。まあ、俺が作らせたけど、アレは旨いもんな。


「カタリナちゃんの気持ちが分かるなんて言えないけど、今を一緒にいてあげることは出来るよ。だからそんなに辛そうな顔しないで、私が私達がいるよ」

 カタリナちゃんの友達3人、めちゃくちゃ良い友達じゃん。

 なんかもうファーーーだわ。特大のファーーーだわ。


 友達皆もモブイと一緒にカタリナちゃんを抱きしめる。

 カタリナちゃんも少しずつ落ち着いていって、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも前を向いた。


「皆・・・ありがとう。ちょっと辛い真実を知ってしまっただけだから。でも私には皆がいる。今の私ってとっても幸せだ。フフフ」

 漫画だったら見開き使うくらいのとびっきり可愛らしい笑顔を見せるカタリナちゃん。

 多分、復讐に思考を囚われていたけど、前を見たら自分を心の底から心配してくれる仲間がいることに気が付いたんだな。

 俺が無理に手助けしなくても仲間との絆で解決じゃないか。漫画で読んだら三文芝居って思うかもやけど、実際にこう目の前で起きると、良い話じゃんか。


「カタリナ・・・」

 あ、モブイが明らかに一目惚れしたっぽい顔したぞ。

 カタリナちゃんの笑顔に惚れたぞ。元々惚れ気味だったのはあるかもだけど、それでもだろ。

 モブイ、ベロア先生は良いのかよ。惚れやすいにも程があるだろ。


「ねえ、これでこのダンジョンの階層はクリアってことでいい」

 カタリナちゃんが俺の方(魔道人形)を見てそう言い切った。

 強い目をしていた。

 さっきまで残酷な真実を知ってしまって精神が崩壊していたカタリナちゃんはもうどこにもいなかった。


「ああ。もちろんだ。見事だ。強き少女よ。よくぞ残酷なる真実に立ち向かった。これは我からの個人的な報酬だ」

 かなり良い物を見させて貰ったし、スキルで共有している俺のアイテムボックスから友愛の指輪を4つ取り出して、その場で付与魔法を施し、改造する。

 友愛の指輪の効果は互いにつけている対象の友愛のレベルによって一部ステータス共有強化、スキル共有強化、状態異常耐性、位置情報把握等の様々な恩恵が受けれるかなり優れた魔道具だ。

 それを俺の改造で本来であれば二人しか効力を発揮しないところを4人全員分効力を発揮するようにし、更に即死耐性というかなり強い耐性も付与しておいた。

 最低でも金貨数百枚程度の価値はあるだろう。


 え?モブイの分?なんかモテて腹立つからなしだ。というかモブイ、そんな指輪なくても充分に化け物強い、この世界の上澄みの存在だから良いやろ。


「これは・・・指輪ですか?」


「ああ。そうだ。その名も友愛の指輪。そなた達仲良し4人組にピッタリの魔道具だ」


「物品鑑定。うおおお。凄い、デフォルトで即死耐性効果に友愛のレベルによって様々な能力の大幅強化。凄い、凄い魔道具だ・・・」

 鑑定したモブイが一人で騒ぎ出した。 

 まあ、実際凄い魔道具だしな。


「良いんですか?」


「ああ。もちろんだ。では先に進むが良い。そなた達の活躍期待しているファーーー」


 カッコよく締めくくってこのまま転移で去ろうとしたら、魂に染みついたファーーーが出てしまった。

 ファーーーが・・・・・・







「ファーーー」




 



 どうすんだよこの空気。 

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