脅迫される校長先生
我、いや俺は今、人生で3度目の運命分岐点に立たされている。
一度目は指揮王と称される出来事となったあの魔物暴走を俺の完璧な指揮によって食い止めた時。
二度目は絶対に勝つことが出来ない、最悪の化け物である愉悦王・アーゲインストに出くわしてしまった時。
そして3つ目は、今現在、世界経済を表から支配していると言ってもいいアンクル商会・商会主であるアンクルが校長室に突然現れ1対1で対面している状況だ。
今更説明する理由がない程に巨大で強力なアンクル商会。
その商会主・アンクル。
見た目はグレン・アスフォールを大人しにして少しイケメンにしたような形、正直、探せば似たような人がいそうなレベル、何処にでもいそうな普通の人って感じだ。
しかしながら、彼の噂は仕事柄幾つか聞いたことがあるがどれも常軌を逸しているものであった。
曰く、錬金魔法の達人であり、たった一人で神器やエリクサーの錬成が可能である。
曰く、強大な戦闘力を持ち、たった一人でレベル80越えのレッドドラゴンを駆除出来る。
曰く、未来予測が可能であり、事前に自然災害などを察知して適切な処理をして多くの人命を救っている。
曰く、本当は人間ではなく神であり、地上をより良いものにする為に下界に降りてきた。
曰く、不老不死であり不眠不休で仕事に取り組んでいる。
曰く、常に胃痛に悩まされていてお手製の胃薬を持ち歩いている。
等々。
何処までが嘘で何処までが本当か分からなかったのだが、今日彼と出会った理解出来た。
噂ってのは出鱈目だ。
嗚呼、本当に馬鹿馬鹿しいくらい出鱈目だ。
何だこの化け物は。強いという言葉では表せれない異次元の存在、それこそあの愉悦王・アーゲインストに並ぶかそれ以上の化け物だ。
アンクル商会の力を使えば経済的に国を滅ぼせるだろうが、アンクル一人で武力という面でも国を滅ぼせるだろう。
世界を支配する経済力に伝説の大魔族に匹敵する力を持った存在。
何の悪い冗談だそれは・・・。
ただ、それ以上に化け物なのはグレン・アスフォールだ。
アイツは一体何者なんだ。
化け物なんて生温い神だ。アイツは神だろ。じゃないと説明がつかない。
俺は指揮王の能力で相手を指揮出来るかどうか見極めることが出来るのだが、アンクルを見た際に出た表記はただ一つ。
【完全支配済み】
完全支配済みという表記はその存在が創造された存在かつ100%の権利を創造主が保有している時にのみ現れる。
例えば錬金魔法で生み出せるホムンクルスやキメラなんかがこの完全支配済みに該当する。
逆にそれ以外では存在しない。奴隷だとしても、子供だとしても、完全支配済みという表記にはならない。
完全に完璧にその存在を一から創り上げた、存在でなければならないのだ。
つまりどういうことかという。
グレン・アスフォールは伝説の大魔族に匹敵する化け物を創造出来る存在であるということだ。
それは神だろう。
神でなければ何だというのだ。
「シキ殿、貴方は聡い。マイマスターも貴方の力を認め、敬意を払われていらっしゃる。
だから私も貴方に敬意を払おう。
アンクル商会主にして、マイマスターの第一眷属・アルティメットホムンクルスのアンクルだ。
マイマスターの為にこれからよろしく」
待て待て待て待て待て。
嗚呼、そう待つのだ。落ち着け冷静になれ俺。
今、コイツは、アンクルは何といった。
自分がアルティメットホムンクルスだと。
アルティメットホムンクルス、伝説の錬金術師にして魔王討伐に辺り勇者に協力をした、アトリが晩年に生み出した最上位のホムンクルス。
その力は魔王すら超え、たった一体で世界を滅ぼすことすら可能であるアトリは評し、その強大な力が自分の死後、人類に向くことを恐れたアトリは自らの手でアルティメットホムンクルスを消滅させた。
そんなアルティメットホムンクルスだ?
しかも第一眷属と言った。
第一ということは第二、第三がいるということだ。そしてホムンクルスは11の法則があるので、最大11体保有することが出来る。
11?
あ、待てよ待てよ。待てよ。
そういえばアンクル商会の12統括者の一人がグレン・アスフォールだったよな。
12ー1は11。
子供でも出来る簡単な計算だ。
ホムンクルスの11の法則として、ホムンクルスの最大保有数は11体。
伝説の存在であるアルティメットホムンクルスだ。姿形なんて自由に変えられるだろう。
アルティメットホムンクルスが11体いる可能性・・・非常に高そうだな。
魔王を超える最強が11体何の冗談だ。
ああ、クソ、知りたくもないことを知ってしまった、理解してしまった気分だ。
どうする?どうすればいい?
「色々と考えているようですが、聡いあなたならばどうするのが正解か分かるでしょう?」
どうすればいいか・・・。
やろうと思えば俺を今すぐ殺すこともアンクル商会の力を使って学園長という立場を罷免にして都合の良い駒を挿げ替えることも可能だろう。
それをしないってことは俺が都合の良い駒として扱えるって思ってるんだろうな。
ああ、全くもって大正解だ。
「アンクル商会の為にこの身を捧げましょう」
「あ、別にたかがアンクル商会に身を捧げなくていいですよ。
我がマイマスターであるグレン様の為に忠誠を誓いなさい。その身を捧げなさい。
そして、この英雄学園で少しでもグレン様が楽しめる様に尽力をしなさい」
世界経済の支配者であるアンクル商会をたかが、か。なるほど。
そんでもって、アンクル商会よりも、グレン・アスフォールが楽しめる環境を作る方が大切か。
なるほど。なるほど。俺の想像以上にグレン・アスフォールはとんでもない存在だったな。
「かしこまりました。指揮王・シテンの名に懸けてグレン様がこの学園で楽しんで頂けるように尽力させて頂きます」
「ああ、それでいい。じゃあ。今から早速作戦会議を始めようか」
「かしこまりました」
ハア、一応職員会議今からあったんだけど、これは行けそうにないな。
胃が痛い。
―――――――――――――
更新が遅くなったのは私の怠惰です。
ごめんなさい。
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