アルティメットホムンクルス会議


 アルティメットホムンクルスとはホムンクルスの頂点に存在する最強のホムンクルスであり、その戦闘能力たるやしっかりと育成を行えば国を滅ぼし世界に絶望を振りまく魔王をフルボッコに出来る程の力である。

 というか、フル育成をすれば魔王よりも格上で世界を滅ぼす最強最悪の存在である邪神すらも肉塊に出来る化け物である。もうお前が神になれよ。

 そんなしっかりと育成にフル育成すら超えて、理論値に近いレベルで育成された最強のアルティメットホムンクルスが11体もいた。


 1体でも世界を滅ぼせる邪神を肉塊に出来る化け物が11体。過剰戦力とかいうレベルを超えてこの世界には過ぎた力である。この世界を考えるならばとっとと別の次元に送った方がいい。

 そんな化け物11体はアンクル商会の地下会議室にて全員が椅子にしっかりと着席をして、神妙な顔つきをして一堂に会していた。


 今から一体何が始まろうとしているのだろうか。


 重苦しい空気とレベル50程度の凡人(この世界での一流)が気絶するレベルの魔力が漂うな中、一体、否、一人のアルティメットホムンクルスが口を開いた。


「皆に集まったのは他でもない、我らが敬愛し忠誠を誓うマイマスターの為だ」

 この11体全てのアルティメットホムンクルスを作成し、世界の全てを事実上支配しているといっても過言ではない神、グレン・アスフォールが最初に作成したホムンクルスであり、最も信頼を置くホムンクルス。

 アンクルは他10体のアルティメットホムンクルスの前でそう告げた。


「ほう。我が君の為とはのう」

「それならばわっちらは最善を尽くさないといけないでありんすね」

「主様の為ならばどんな情報だろうと収集してみせるでござる」

「ああ、俺様はどんなものでもぶっ壊してやるよ」

 何体かのアルティメットホムンクルスが騒ぎ立てる。

 アルティメットホムンクルス達の統括者であるアンクルは彼ら彼女らを一瞥しながら、話を続ける。


「我らが敬愛するマイマスターのおかげで、この世界は平和になった。我らがマイマスターから聞かせられた本来の世界、最悪の未来とやらはほぼ全て事前に解決をさせたと言っていい」


「確かにそうですわね。皆が平和で幸せなのでは良い事です」


「ああ。そうだな。アテナ。良い事だ。でもなマイマスターはそのせいで退屈を感じておられるのだ」


 その瞬間にアルティメットホムンクルス達に衝撃が走った。

 

「そ、それは由々しき事態ですね」


「ああ。その通りだ。本当にその通りだ。我らの存在意義は全てマイマスターの為にある。マイマスターがこの世界で楽しく生きる為にあるのだ。

 我らは常にマイマスターの為を想って行動をしている。にも関わらずだ。そのマイマスターが暇をしておられる。これが許されていいことなのか?マイマスターを楽しませてこその我らじゃないか。

 しかも、マイマスターが暇をしている原因として我らが世界を平和にしてしまったからがあるというのならば尚更だ」


「確かにそうだな」

「ああ。本当にその通りだ」

「我らの存在意義全てが主様の為にある」

「だがしかし何をするというのだ?」


「そう。そうなのだ。何をするという話なのだ。それが今回皆に集まって貰った理由なのだ。マイマスターが退屈をしない為に、楽しく生きられるように我らで力を合わせて楽しそうなイベントを引き起こそうという話なのだ」


「なるほど。つまり私達全員で我が神が楽しい日々を送れる様にするという話ですね」


「そういうことだ。という訳でお前たち何か良い案がないのか考えてくれ。一応俺の方でも色々と考えてみたが、マイマスターが心の底から楽しめる為には幾つかの条件があるということに気が付いた」


「ほう?確かに主様の性格的に幾つか思い至る所があるな」


「ああ。そうだな。まず。一つ目は犯罪者以外は不幸になってもいけないし、何かしらの害が加わってはいけないだ。

 マイマスターは犯罪者に対しては強い憎悪、いや嫌悪感を抱いている。そして犯罪者は罪に応じた報いを受けて当然であると考えている。

 軽い犯罪であれば、そこまで気にしてはおらんが、重い犯罪、強盗殺人や強姦、奴隷攫い等の罪を犯した者はマイマスターの中では一発アウト、処刑しようが人体実験に使おうが気にしないし、むしろ良い事と考えている。

 反面、罪を犯していない人に対しては凄く寛容で、幸せになる権利があると考えられている。だからこそ、自分がそういった人達の幸せになる権利を害するのを酷く恐れており、絶対にしてはいけないと考えている」


「確かにそうですわね」


「でもでも、そういった優しい所はグレんっぴの良い所だと思うけど、何だから歪だよね僕?皆もそうでしょ?」


「ダナー、我が神に対して不敬ですよ」


「でもでも、アテナだってそう思ったことない?というかアテナが一番そう思ってるんじゃない?だって、慈善事業を統括し、慈愛の化身であるアテナにとって救いようのない悪はともかく、生まれや環境によってやむを得ない事情で犯罪に手染めた人も容赦なく殺すのは凄っく、モヤモヤすることだと思うんだね。僕」


「そ、それは、それでも私は私を創造して下さり、多くの人を救った我が神を敬愛しています」


「それは僕だって同じだよ。というか、この中にグレンっちのの事を嫌いな人なんていないよ。皆、グレンっちのことが大好きだよ。僕だってグレンっちの為ならこの身全てを捧げても構わないと思ってるよ。

 ただ。グレンっちが歪だなって思っただけ。でもでもそれってしょうがなくない?だってどうしようもない事実なんだから。他にもグレンっちの歪な所を挙げればいっぱいあるよ。

 例えば、口では命を大切にしているけど、命を凄く軽い物として扱っていて、死に対しての頓着が異様に低い点とか。グレンっちが14歳の時に起こしたあの事件は皆も覚えてるでしょ?

 自分のエゴで魔王殺しの英雄学園で不幸になったキャラ達を救うけど、その途中で不幸になる人が出たりしても気にしないところとか、アンクル商会を作った時だって、今まで真っ当に商売してきた人たちを大量に路頭に迷わせてるでしょ?

 中には借金返せずに首を吊った男だっている。その後、その男の妻と娘が借金奴隷に落ちて、アンクル商会で買い取って働かせて感謝させるとか、エグイマッチポンプにも程があるでしょ。

 アテナ含め、業の値が善によって生み出された皆はそういう享楽主義めいたグレンっちの行動が嫌でしょ?

 でも、グレンっちのおかげで多くの命が救われていて多くの人が幸せになって、多くの悪しく人間が罰せられているのは本当。そういう意味ではグレンっちは神であり善っては間違いないよね。でもでも、グレンっちのせいで不幸になって苦しんでる人もいる。

 ああ、本当にグレンっちってば歪だよね」


 ダラーは自分の思ったことを心のままにぶちまける。

 そういう存在としてグレンによって創造されたからこそ全部をぶちまける。

 それは11のアルティメットホムンクルス全員が少なからずは気になっていることでありつつも、下手に触れれば忠誠を疑っていると思われてしまうところから触れられなかったことであった。

 そしてダラーの言葉通り業が善に寄ってるアルティメットホムンクルスはグレンのそういうところを酷く気にしていた。


「ダラー。黙りなさい。これはアルティメットホムンクルス統括者であり、第一眷属である私アンクルからの命令です」

 これ以上ダラーに喋られるとアルティメットホムンクルス同士に亀裂が生まれてしまうことを懸念したアンクルは話を切り上げさせる。

 素早い判断、対応であった。


「ちっぇ。分かったよ」

 面白くなさそうに舌打ちしをする。ただ、自分よりも主に信頼され、権限を渡されているアンクルに逆らうことは出来なかった。


「さて、今のまま11人で話し合っても有意義な話は出来なさそうなので、私の方で用意したマイマスターが心の底から楽しむ為に守らなければならない簡単なことマニュアルを配布しておく。

 これをしっかりと読み理解した上でマイマスターを楽しませる為に各々で行動を起こしてくれ。

 その為ならばアンクル商会とダーネスの力はいくらでも使って構わない。ただ、決してマイマスターが望まぬことはするなよ。

 分かったら解散」


 かくして、世界を滅ぼせる邪神よりも強い化け物11体は不穏な空気を残しつつ各々自分の主であるグレンを楽しませる為に行動を開始することを決意するのだった。









―――――――――――――――――――


 補足説明

 業が善寄りのアテナにとって主であるグレン様が悪のような行動をする行為に対して葛藤を抱くが、忠誠心はしっかりと持っているし絶対に裏切ることはない。

 ようはオ〇ロのセ〇ス。 ヒント・【バ】

 

 補足説明2

 アルティメットホムンクルスは自分たちの創造主である主人公。グレンには絶対の忠誠を誓っているし裏切ることは絶対にない。

 ただ、仲間である同じアルティメットホムンクルス達同士は基本的には仲が良いが絶対にそうというわけではなく、場合によって互いに足を引っ張り合ったり、主の考えを曲解して極端な行動に走る可能性もある。←元々、中学生の時に書いてた戦闘狂時代からこういう設定を書きたかった。

 ようは陰〇の七〇。 ヒント・【実力者】


 補足説明3

 主人公であるグレン・アスフォールは歪です。 

 これは事実です。

 功績という点であげれば、世界を絶望に陥れて多くの人の命を奪う魔王の復活どころか邪神の復活も阻止し、悪しき犯罪者や組織に貴族を大量にキリリングゴー(殺戮)し、大勢の命を救い、その後の生活すらも保障した。市民の生活が豊かとなるアンクル商会とダーネスを作り上げた。

 魔王殺しの英雄学園の知識を使い、事前に様々な災害を食い止めて多くの人の命を救った。前もって悪人を始末して、犯罪を未然に防いだ。

 等々。

 大量にあります。

 それでも、その過程で不幸な人が出ても知れば多少気にするが、知らなければ気にしない。それが少し考えればわかることでも考えない。

 あらかじめ犯罪を犯す人間を殺す。例え今は罪がなくても、最終的に世界の癌であると判断したのならば迷わない。

 自分がもっと積極的に動けば助けられた命もあるだろうに、行動をしない。ただ、自分の気が向けば行動をする。極論偽善であり自己満足に近い。大いなる力には大いなる責任が伴うと偉大なヒーローが言いましたが、主人公は自分の力を何処までも自分の為だけに振います。

 ある種、心の何処からでこの世界をゲームのようなものとまだ思っており、その矛盾に自分で気が付いていない。


 当たり前の話ですが、アンクル商会が急成長する過程で多くの商人が潰れています。不幸になっています。

 主人公はそれを商売の世界だししょうがないと割り切ってます。

 悪人にも家族はいます。ダーネスによって洗脳させたり始末させたりしてる貴族にだって子供や妻がいる。家族の前では優しい良い父親でも容赦なくキリリングゴー(殺戮)します。その上で子供や奥さんは罪を犯してないからとそのまま放置します。

 一家の大黒柱を失った幼子と貴族として働かずに生きてきた女性がその後どうなるのか想像もせずに。

 何なら不正の証拠を突き付けて領土を奪ったりもします。


 視点を変えれば悪以外の何者でもありません。

 

 それでも基本的には気にしないし、そういうものだと思ってるのが主人公です。

 といっても日本人的価値観を持ってる為に善人ではあるので、何かしらの拍子に主人公が可哀想と思えたり、助けてあげようかなと思ったら、急に助けたりします。

 何年も主人公のせいで苦しめられたり場合によっては死んでたりしてるのに、今更にも程があっても、気が向いてしまったら助けます。

 本当に歪ですね。でもそこがある種とても人間らしいです。

 

 何故なら主人公は普通の人間だからです。

 魂も怠惰で女好きで嫉妬深く自己中心的だけど馬鹿で間抜けで何処か憎めないグレンと平和で戦争なんて存在しない日本で何不自由なく育ち学び、多少の挫折の苦労はあれど大きい物ではなく、ゲームや漫画、アニメが大好きの超絶オタクのサラリーマンの2つが混ざった形ですから。

 完璧な人間になるわけがありません。

 ただ、強大な力を持ってしまっただけの普通の人、それが主人公です。人並みに罪悪感があるし人並みに情もある。だた、振るえる力の幅が神と同等かそれ以上なだけ。

 そんな神のような主人公に何かを求めるのが間違ってますよ。


 以上。補足説明終わり。


 因みにダナーは男の娘です。

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