俺氏、先生に醜態を晒させてしまう


 かくかくしかじかけいはっかくで訓練場に集められた俺達はシズク先生から10メートル程離れた的に思い思いの魔法・魔術を放ってみる様にと指示される。


 シズク先生が選んだ順もとい下位のクラス順に魔法・魔術を放っていくのだが、何というが生徒の皆が凄く弱い。

 といっても今の所、DクラスとCクラスのみだけど。それでもだ、めちゃくちゃに弱い。弱すぎる。

 俺が強すぎるだけといえばそうかもしれないが、それでも限度があるだろってくらい弱い。

 一通り、ステータスを確認したが、皆レベルは20行かない程度で得意属性もレベル2とか3だ。

 魔法や魔術もへなちょこで酷い人だと10メートル先にある動かない的にすら魔法を当てられなかったりしている。

 一応ここは天下の英雄学園だ。

 数々の英雄を輩出してきた世界で最も優れた学園といっても過言ではない場所だ。

 

 そこの生徒がこのレベル。

 弱すぎる。

 俺の記憶が確かならば原作ではもう少しマシだった筈だ。

 少なくとも英雄学園に入学してるだけあって大体皆レベル30以上はあるし、得意属性のレベルも3とか4とかはあった筈だ。

 

 何かあったのかねって、あ、あれれれれ?

 これ、もしかしなくても原因俺じゃね?

 アンクル商会とダーネスが出来たことによりこの世界の治安は安定したし、魔物による被害も大幅に減った。

 アンクル商会とダーネスの経験値稼ぎの為に本来であれば難易度が高く数多の犠牲の果てに攻略したり、魔物暴走を食い止める必要のあるダンジョン等をクリアしまくっている。

 それに今はまだ魔王の進行が本格化してないが、原作であればもう既に魔王が復活しており、それに伴って魔物も活性化してくる。


 それが全部主に俺のせいで消えてしまっている。

 それ即ち、他の人達の成長機会を奪っているということだ。


 なるほど。こう考えてみるとアンクル商会とダーネスを除けば世界全体のレベルというのがゲームの時よりも大幅に下がってるかもな。


 我ながらやらかしまくってるな。


「ハア。驚いたよ。まさかお前たちがここまで弱いとはな。入試の時に薄々感じてはいたが、それでもだ。

 今、魔法を放ったのは全員DかCクラスだ。

 下位のクラスだからと言い訳をするな。もっと精進しろ努力をしろ研鑽を続けろ。

 ここは天下の英雄学園だ。そんなレベルじゃあ進級すら危ういぞ」


 シズク先生からの激が飛ぶ。

 ゲームの時はシズク先生がこんな怒り方をするみたいな描写なかった気がするけど、何というか少し申し訳ない気持ちになるな。


「ハア、まあ良い。次Bクラスの生徒」

 Bクラスの生徒達が魔法・魔術を放っていく。

 

 ちらほらレベル40くらいのそれなりの者がいたが、基本は30程度でまあ何というかそこそこって言葉が似合う強さだった。


「悪くはない。何人か筋の良い者もいる。ただ、何人か根本的な魔力が足りてない者がいる。

 取り敢えずレベル上げの特訓をするか、得意属性のレベルを上げなさい。

 何をするにしてもまず話はそれからよ。詳しい説明は全員分が終わった後にするわ。

 じゃあ、次はAクラスの生徒」


「はい」

 主人公もどきが元気いっぱいに返事をして一番最初に魔法を見せる。

 見せた魔法は四代元素魔法混合弾。

 上級魔法程度の威力があり、的を破壊して、そのまま訓練場の壁も破壊する。


「ほう。中々に良い魔法だな。魔力も相当多い。お前は見込みがありそうだ。流石Aクラスというべきか」


「ありがとうございます」

 露骨にシズク先生の好感度を上げに来てるな主人公もどきよ。

 だが、甘いもっと強い俺とモブイが控えてるぞ。


「じゃあ、次は俺がやっていいっすか?」

 モブイが手を挙げる。


「もちろんだとも」


「では、行きます。闇魔法・闇弾」

 モブイの放った魔法も主人公もどきと同じ的を破壊して訓練場の壁も破壊する。

 威力は正直主人公もどきと変わらないくらいか、少し上程度だった。


「おお。お前も強いな。ただ魔力量が多いのに無駄が多い。

 学べばもっと強い魔法を使えるはずだぞ。そこはこれからの課題だな」


「はい。ありがとうございます」

 モブイは少し辛口だな。


「じゃあ、次は俺お願いするファーーー」


「じゃあ、オロオロオロ~~~~~~」

 シズク先生がゲロった。

 盛大にゲロった。

 比喩とかじゃなくて純粋にゲロゲロった。


「ひ、何て魔力、こんなの見たことがない。ば、化け物」

 完璧に腰を抜かして俺を化け物と罵ってくる。

 

 ヤバい、思い当たる節しかない。

 なんなら称号も化け物だし。


 そういえばシズク先生って魔力判定っていう人の魔力をオーラのような形で見るスキルを持っているって設定あったな。

 それで、俺を対象に見てしまったと。


 神となり天高くそびえ立つ山よりも高い魔力を持った俺を。

 どんな風に見えてるかは俺には分からないけど、多分化け物というのが相応しいような感じだろうな。


 ナチュラルに生徒の一人が天高くそびえ立つ山よりも高い魔力を持っていたと。


 なるほど。それは吐くわな。


 何というか。申し訳ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る