俺氏、主人公もどきを庇う


 俺とアーゲインストで食堂に出向いた。

 何気に初めて来た食堂であったが、お昼時ということでかなりの人で賑わっており、割と楽しそうな雰囲気であった。

 イメージとしては広い大学のアニメとかで出てくる絵にかいたような食堂って感じだ。

 

「さてさて、グレン・アスフォール、貴方は何を食べますか?」


「俺は、まあスペシャルセットでも食べてみるファーーー」

 スペシャルセット、ゲームに度々登場する。これでもかってぐらい豪華で豪勢な料理だ。

 お値段の方も驚異の10万ゴールドと終盤とか2周目プレイならばそこまで負担じゃないが、序盤は絶対に買えない馬鹿高い料理だ。

 一回は食べてみたかったんだよな。


「おう。あのスペシャルセットですか。それはマーベラスですね。私も一度食べたことありますが。とても凄く素晴らしくマーベラスでしたよ。

 私もスペシャルセットにしましょうかね」


「よし、じゃあ列に並ぶとするかファーーー」


「そうしましょう。そうしましょうとも。あ~~~、マーベラス」

 俺とアーゲインストで律義に学食の列に並ぶ。

 世界最強であり、ファーーーといつもうるさく割と目立っている俺とマーベラスといつもうるさく、見た目が100%の不審者であり元魔王軍四天王の愉快王・アーゲインスト。

 

 この二人が律義に学園の学食に並んでるとか何かのギャクですか?


「え?いや、え?」

 偶々幼馴染と一緒に食堂に来ていた主人公もどきと目があった。


 ・・・・・・・・・


「どうしたの?ジーク」


「いや、え?ちょ、ま、え?いや、は?」


「大丈夫、ジーク、人間の言葉を喋れてないわよ」


「ああ、すまない。えっと。グレン・アスフォール。お前の隣にいるのが誰なのか分かってるか?」

 そうか、主人公もどきは異世界転生者でありゲームも小説を知ってるから愉悦王・アーゲインストが分かってしまったのか。

 なるほどね。

 食堂に行ったら、大量殺戮をやらかしたりしてる人を人と思わない最凶最悪の最上位魔族・愉悦王・アーゲインストが何食わぬ顔で食堂に列に並んでいたと。


 何それ怖い。

 いやまあ今の状況なんだけどね。


「ファーーー、当たり前だファーーー」


「いや。え?何で?ちょっと待って、え?え?は?」


「マーベラス、何て醜く汚れている魂なのでしょう。ここまで悍ましい魂は中々にお目にかかれるものではないですね。

 う~~~ん。実に実にマーベラスですね」


「あ。アーゲインストもこいつの魂見ただけで汚いって分かるレベルなんだファーーー」


「そうですね。そうですね。物凄く汚れている魂ですよ。はい。しかし、不思議なことに魂容量が他の人よりも大きいいですね。

 後は何というか、魂の密度が強く感じますね。

 実に実に実にマーベラスですね。これは凄く実験し甲斐がありそうです。う~~~ん。どうです?貴方、私の実験に協力しませんか?」


「じょ、冗談じゃない。お。お前の実験ってそれ俺確実に殺されちまうだろ」

 三下の悪役みたいな台詞を吐き捨てながら、幼馴染と一緒に走って逃げていった。


「う~~~ん。逃げられてしまいましたか。マーベラスですね。

 しかしとっても良い実験体になりですし。追いかけて捕まえましょうか?う~~~ん。それもまたマーベラス」

 アーゲインストの実験、まあ、確実に俺も協力することになるし、主人公もどき死ぬな。

 死ななくても良くて廃人、悪くて人の形が消え失せるとかだな。

 

 一応主人公もどき自体が明確な罪を犯してるわけでもないし、俺が躊躇いなく実験材料としている死刑囚達の犯した罪と比べれば可愛いらしいものだからな。

 訳の分からないことを叫んで建物に火をつけまくり多くの犠牲者を出した連続放火魔とか。

 増税に継ぐ増税と愚策に継ぐ愚策を行い、最後は全ての民から恨まれて民の総意によってダーネスへと暗殺依頼が送られる程の愚王とか。

 罪のない旅人や商人を襲い奪い犯し殺し続けた盗賊達とか。

 子供を甚振ることに快感を覚えて、幼児ばかりを狙う連続殺人犯とか。

 無理やり幼児を攫って犯してそのまま内臓を破裂させて殺した最悪の強姦犯とか。

 義賊を装って、金持ちの家にのみ入り邪魔をする者を斬り殺した上で金銭を根こそぎ奪う最悪の強盗殺人犯とか。

 数多の詐欺を行い、何千人という人を騙して人生のどん底に陥れたり、自殺に追い込んだり、借金奴隷として売り払ったりして苦しみ足掻くその様に最高の悦を感じる最悪の詐欺師とか。

 

 こう考えてみるとどいつもこいつもそれは死刑になるわなってレベルの悪人だな。

 

 前回も似たような結論だったけど、主人公もどきは、そうじゃないからな。

 助けてあげるとしますか。

 

「アーゲインスト、主人公もどきは俺の基準だが、人体実験で使い潰されるような罪は犯してない、魂は汚れてるかもだが、主人公もどきによって救われた人(ハーレムメンバーや冒険者ギルドの依頼を通じて村や町を救っている)がいるのは事実だ。

 主人公もどきを害するのは俺が許さない」

 珍しく声に感情が入った。

 多分、俺の中で同郷だからっていう理由もあるかもしれないな。


「そうですか。貴方の協力を得られないと私は実験が出来ませんからね。しょうがないです。非常にマーベラスですが、諦めましょう」


「そうか、それならよかったファーーー」



 ――――――――――


 大学が忙しすぎて少し更新が遅れてしまいました。

 何とか頑張って書き続けたいとは思ってます。


 ※人体実験用の死刑に値する存在として出した例に何か深い意味はありませんので、あまり気にしないでください。

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