俺氏、アイツと本気で戦ったら王都が滅ぶ(ガチ)


 金曜日午前の授業は【魂・精神学講座】だ。

 変な名前かつ何を教えるのか割と検討がつかないこの授業なのだがゲームに存在していない未知の授業である。

 おそらく俺が色々と原作をめちゃくちゃにしたことによって生まれた授業ではあるのだろうが、やはりゲームには存在しなかった授業という点が気になって取って見た。

 

 早速、指定された教室へと向かう。

 特に何事もなく到着し、教室に入る。


 中には俺以外誰もいなかった。

 教室間違えたかなと、再度確認をするが間違っていなかった。


「まさか、俺以外誰も取ってないってことファーーー?」

 悲しすぎる考えが思い浮かぶのは【魂・精神講座】という明らかに怪しい名前の授業だ。

 何をするのかも授業説明パンフレットには魂と精神について研究するのみとして書かれていなかったし、担当の先生も名前すら聞いたことない人だった。

 うん。落ち着いて考えてみたが、常人ならこんな授業取らないわな。むしろ、この授業を選択した俺って大分異常かもしれないわ。

 

 まあ、いいや。

 取り敢えず、教室の中で読書でもして待ってるか。その内先生来るだろう。


 待つこと5分

 

 ガラガラという音と共に身長は2メートル程、シルクハットを被り、服は紳士服であり、何故か腹部には大きな目玉が紫色で描かれていてやけに不気味というか、物凄い胡散臭さを全身から感じさせてくる人物が入ってきた。

 というかこれ人間か?


「君が私の授業を取ってくれた唯一の生徒ですか。

 ん~~~、実に実にマーベラスですね」


 先生だった。

 え?これが先生???


「あ。はい」

 思わずファーーーも忘れて呟く。

 この明らかに怪しすぎる人が天下の英雄学園の先生って事実が信じられないのだが。良く入れたな。

 しっかし、不思議だな、何となくこの怪しさ100%に既視感を感じるのだが。

 ・・・・・・・う~ん。思い出せん。


「さて、では時間も勿体ないですし、挨拶の方を始めさせていただきましょうか。

 私の名前はアーゲスト。

 得意属性は便宜上、結界魔術です。

 今は主に人間や魔族といった知的生命体の持つ魂と精神について研究をしております。

 ああ、そう、そうなんです。魂とは実にマーベラスなんです。

 そもそも私の考える魂とは知的生命体に必ず宿る有限物質のようなナニカだと考えており、一時期話題になった死んだ人間からは21g体重が減るという、魂21g理論というのがありましたが、私はこれに大変興味を持ちましてた。

 実際に魂に重さがあるのかどうかは分からないのですし、その点については今の私の見解としては魂は重さを持っていないと考えております。ただ、そこに至るまでのアプローチが大変マーベラスでして、そこから着想を経て私も実験を行い、魔物にも魂が宿っているのではないかと考えまして、実際に様々な魔物をを殺してみたりしまして・・・・・・」

 

 厄介オタクみたいに、めちゃくちゃ語りだしたぞコイツ。何言ってんだがマジで。

 しっかし便宜上は結界魔術って含みのある言い方をするな。

 それにマーベラスって俺のファーーーに並ぶ癖の強い言葉・・・、やっぱりなんか覚えがある。


 ・・・・・・・・・


 勝手に人を鑑定するのはあまり褒められた行為ではないけど、やるか。


 鑑定魔法・ステータス完全鑑定

 

 名前 アーゲインスト

 年齢 679歳

 性別 その他

 種族 最上位魔族

 レベル 99

 HP 9999

 MP 19999

 攻撃力 9999

 魔力 19999

 防御力 9999

 俊敏 9999

 

 最上位スキル

 結界王LV6 愉悦王LV3 研究者LV9 耐性者LV5  


 称号

 最上位魔族 元魔王軍四天王 愉悦王 結界王 研究者 魔族史上最悪の裏切者 復活者 世界の激動を見届けし者 傍観者 引きこもり 英雄学園講師


 ・・・・・・・・・


 は????????


「おやおやおや、今、私を鑑定しましたね。

 実にマーベラスですね。でも人が話をしている最中かつ無許可で鑑定とはマナー違反ですよ」


「いやいやいやいや。待て待て待て、マナー違反もクソもないだろ。何故、魔族がいや、魔王殺しの英雄譚から存在している、最悪にして最凶にして最強の魔族、戦い方によって魔王すら超えると評されている愉悦王・アーゲインストがここにいる。

 というかお前は魔王殺しの英雄譚にてラスト死んだはずだろ。愉悦の為だけに魔王を裏切って主人公側につくも、最後は魔王によって殺されただろ。

 お前が生きてる筈がない」

 思わず取り乱して叫んでしまう。


「のんのんのん、私は生きていますよ。ほら足だってあります」

 自分の足をポンポンと叩く仕草を見せる。


「いや、そうじゃない。何でお前が生きてるんだって聞いてるんだ。答えろ、アーゲインスト。いや、答えなくて良い。

 魔王殺しの英雄譚を愛読してた俺はどれだけお前が危険で狂っているかを知っている。ここで殺させてもらう」


「おやおやおや、そんなことをしていいのですか。

 私は貴方が知りたがっている情報を知ってますよ」

 俺が知りたがってる情報だと・・・一体なんだ。

 いや、駄目だ。虚言に惑わされるな。コイツは今ここで始末をしなければならない。コイツは最悪の愉快犯にして愉悦者だ。

 倫理観とか一切存在してない100%の悪だ。


「そんなもの知るか。死ね。死魔法・強制執行・抗えぬ死」

 自分よりもステータスの低い相手を100%殺す魔法だ。

 いくらあの愉悦王・アーゲインストとはいえこれで死んだだろう。 


「ん、のんのんのん、マーベラス。全ては愉悦となりて」

 

「無効化されただと・・・。ならば、支配神である俺が命ずる。愉悦王・アーゲインストよ。俺に支配されろ」


「マーベラス。では、支配されましょう。そして私は愉悦王として貴方のどんな命令をも無視しましょう。

 ああ、それはそれは凄くマーベラスですね」

 確認する。

 確かに俺は今、愉悦王・アーゲインストを支配した。

 支配したのだが、何も命令できないし、何も弄れない。

 なるほど、支配された上でその支配を無視という形で無効化したのか。

 理論上は確かに可能だな。クソ、めちゃくちゃだな愉悦王・アーゲインスト。

 死系統も使えない、支配も出来ない。

 となると攻撃してHPを全損させて殺すしかないと。

 多分俺なら殺せる。この文字表記になってる最強ステータスと賢神と武神の力をフルに使えば余裕だろう。

 ただ、簡単には殺せない。俺には圧倒的に実践経験という物が少なすぎる。

 679年という気の遠くなるような年月を生きて、それ相応の実戦経験を積んでいるあの愉悦王・アーゲインストとの戦闘だ。

 俺が殺しきるまでに一体どれだけの被害が出るか・・・。


 この学園はおろか、この王都全てが更地になりそうだ。

 王都には俺の家族が住んでいる。一応ハンゾウの分身が護衛に回っているが、いきなりの激しい戦闘となれば速やかに逃がすことが出来るかどうか微妙なラインだ。

 もし巻き込まれでもしたら、死体が残ってたり、死んだ場所が分かってれば蘇生は出来るが、王都崩壊の混乱で居場所が分からなくなり、死体も見つからなければ・・・・・・・

 いくら俺でも死体が残ってないと蘇生できないし、王都という広範囲の時戻しも不可能だ。


 クソが、家族は最優先事項だからな。今この場においては八方塞がりだな。

 取り敢えず最悪の可能性を考えて家族は避難させておこう。


【ハンゾウ、家族を今すぐ避難させろ】


【かしこまりましたでござる】

 後は少し時間を稼ぐだけだな。これで最悪の場合は戦いという選択肢を取れる。


「マーベラス、マーベラス、マーベラス。貴方は強い。強いがしかし、守らなければならないものが存在する。私と戦えば王都が滅ぶ、そして王都には貴方が心の底から大切にしている家族がいるから手が出せなくなっているのでしょう。

 のんのんのん、マーベラス。実にマーベラスですね。

 では、私と取引をしませんか」


「取引だと・・・言ってみろ」

 少しでも時間を稼ごう。


「貴方の知りたいこと。魂について私が教えて差し上げましょう。

 その代わり、貴方の運営するアンクル商会の方で私を禁忌部門の研究者として働かせてください。もちろん待遇は最高レベルでお願いしますよ。

 ここでも研究は出来ますけど、アンクル商会の方が研究環境が整ってそうですからね。人体実験用の犯罪者もダーネスのおかげで定期的に送られてくるという実にマーベラスな環境ですね。ああ、そう実にマーベラス、マーベラス、マーベラスです」

 俺がアンクル商会の真の創設者であると知っているか。

 更には俺が密かにやっている倫理的に少しアウトな研究部門である、禁忌部門についても知っているか。

 マジでとんでもないな、愉悦王・アーゲインスト


「お前の情報次第だ。後は俺の支配を受け入れて、善人でも悪人でも俺の許可なく人や獣人、エルフに魔族と言った人型の知的生命体を傷つけるという行為の禁止、魔物の扇動や魔族の扇動といった行為の禁止、この国によって定められている犯罪行為の禁止、等々様々な縛りを受け入れて貰うがいいか?」


 ・・・・・・・・・


 嫌な沈黙が流れる。

 ここで断るようならアルティメットホムンクルス含む俺の最高戦力達、全員を呼んだ上で、多少の被害(王都崩壊)を受け入れてでもコイツを始末してやる。

 大丈夫、充分な時間は稼いだから家族はハンゾウが避難させてるだろう。

 多少の犠牲はこの際割り切ろう。一応全部終わった後に俺の力で蘇生と時戻しを頑張れば全員は無理でもほとんどの人は助けられるだろうし。

 まあ、王都は壊滅するけど。でもコイツはそうまでして殺さなければならない化け物だからな。ここで見逃してもっと大きな被害が起きましたってなっては遅い。

 俺はあの時アイツを殺しておけば良かったという後悔はしたくない。

 ただ、向こうも馬鹿じゃない、俺がそうするってことを多分理解しているだろう。

 さあ、なんて答える。さあどうなる?

 

「う~~~ん。まあそれくらいならば許容範囲です。私の研究が出来るのならば受け容れましょう」 

 コイツが、マーベラスと言っていない場合は真面目かつ真実であるという設定があったはずだ。

 100%とはいえないがまあ信用出来るであろう。


「そうか。じゃあ、お前の情報とやらを話してみろ」


「はい。では話させていただきましょう。とてもとても楽しくマーベラスな魂について」


 



――――――――――


 愉悦王・アーゲインストは魔王殺しの英雄譚の一番最初に村を襲って主人公のお父さんに親友をぶっ殺した魔王軍四天王です。

 他にも色々設定はあるのですがそこもまたおいおい。


 因みに愉悦王・アーゲインストの現時点での強さを表すならこんくらいです。


 主人公>邪神>>>魔王殺しの英雄譚の主人公(最終段階)>現在・アーゲインスト>魔王(相手側特攻武器無し)>バーサーカー=過去・アーゲインスト>英雄(ワールドのような戦闘に特化した英雄レベル)=主人公のアルティメットホムンクルス>英雄(戦闘に特化していない英雄)


 まあ、めちゃくちゃに強いです。

 魔王よりも強いです。

 普通に化け物です。

 アルティメットホムンクルス最強の化け物であるバーサーカーよりも強いです。

 多分、作中トップクラスと言っていいレベルです。


 後、もしかしたら気が付いている人がいるかもですが、最上位スキルにある○○王スキルは世界に一つしか存在していません。

 王は世界に一人のみという理論からそういう設定にしました。

 主人公が耐性者を持っていた理由はそれによるものです。

 つまり、どこかに耐性王を持ってる者がいるということです。

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