俺氏、末路を描く
それは突如現れた。
それはひたすらに大きかった。
身長は2メートルを優に超えて、3メートルに迫らんとするレベル。
その身体ははち切ればかりの筋肉で覆われており、茶色に鈍く光り輝いていた。
ゴツゴツとした筋肉からは圧倒的な力と存在感があり、身長以上の圧迫感を出していた。
体重という物で考えれば最低でも数百キロはありそうな肉体。
ドスン
それが歩くだけで、地面が揺れて、足跡がくっきりと残り、地面に大きな穴が空く。
それが呼吸をするだけで、辺り一帯の酸素が減り、他の人は体調を崩してしまう。
それは、鬼すらも逃げ出してしまいそうな形相をしており、その顔を見てしまったが最後、死を覚悟して失禁をしてしまう。
そんな、化け物よりも化け物な存在の名前はバーサーカー。
グレン・アスフォールによって生み出された11体のホムンクルスの一体にして、最強のアルティメットホムンクルス。
レベルは驚異の99、得意属性は筋肉魔法であり、こちらのレベルは9。
その身に宿す圧倒的な筋肉を活用し、ありとあらゆる全てを筋肉によって解決する最強に狂った魔法の使い手。
筋肉は正義である、筋肉は全てであり、筋肉は万能であり、筋肉は神であるということを体現した存在。
過去にはたった一人であの魔邪神信仰の八魔と呼ばれる何百年、何千年と生き、一人で国を滅ぼせるような最悪の化け物を2体同時に相手取り殺している。
武力という点でいえば、大国の全戦力を打ち破れる程の力を持った存在それがバーサーカーである。
もちろんバーサーカーは武力だけを持っている訳ではない、世界経済を支配しているアンクル商会の戦闘部隊の統括者という十二統括者の一人であり、完全実力主義のダーネスにおいて2番目の実力者であり、ダーネス内にて2番目に偉い立場であった。
権力的にも下手な国の王以上の力を持った存在、それがバーサーカーである。
そんな武力と権力、両方の面で隙のないバーサーカーが怒りを露にして、貴族街を歩いていた。
一歩、一歩と地面に小さなクレーターを作りながら歩いていた。
絶対に触れてはならない不可侵略、アンタッチャブル。
近くを歩いていた者は全員慌てて家へと戻り、全ての扉に鍵をかけてベットに潜り震えた。
歩いてなくてもその存在を感じただけで、震え、腹を下してトイレに駆け込んだ。
歩く厄災と言っていいバーサーカーはとある屋敷の前に立ち止まった。
その屋敷はとある伯爵家の所有している屋敷であった。
「ここが、俺様を雇っているだの抜かした馬鹿の屋敷か。
死にたくななければ今すぐに屋敷から出ろ」
バーサーカーの怒鳴り声に、蜘蛛の子を散らすように屋敷から人が出てくる。
メイドから執事から料理人から、護衛の兵士に伯爵家の人達全員が慌てて出る。
出た後にバーサーカーの姿を見て恐怖に怯え、無意識のうちに跪いてしまう。
バーサーカーにはそれだけの圧倒的な力があったのである。
「では、これは報いの一つ目だ。筋肉魔法・破壊・崩壊・大粉砕」
バーサーカーによって放たれた拳が屋敷に当たる。その瞬間に大きな音を立てて、木端微塵に砕け散る屋敷。
たった一発、たった一発のパンチで大きな屋敷が一つ完全に崩壊したのだ。
意味が分からない、その一言に尽きた。
「そして、これが二つ目の報いだ。主様から殺すなと言われているからな。筋肉魔法・強制筋肉痛」
バーサーカーを食客として招き雇っているだのと吹聴をしてしまった愚かな伯爵家の人達全員は激しい筋肉痛に襲われることとなる。
激しい筋肉痛だ。
それこそ、身体の限界を超えて運動をして、更に限界を超えて運動をして、更に限界を超えて到達するようなレベルの筋肉痛。
治るのに最低でも1月は要するような筋肉痛という名前をした一種の拷問めいたナニカである。(筋肉痛という名前だが、魔法で起きた事象な為に筋肉は鍛えられない)
余りの痛みで声すら出せずに悶絶をする。
バーサーカーはそれを見て、少しだけ溜飲を下げつつ、最後の仕上げを行う。
「最後の報いだ。筋肉魔法・超声量・俺様こそがアンクル商会戦闘部隊の統括者の一人にして、ダーネスの№2だ。
この俺様だ。よく覚えておけ。
断じてこの愚か者共に雇われることなどない。
俺様に命令を下せる存在は我が主様ただ一人である。
次、同じようなことが起きれば命はないものと思え。以上。
転移の神器発動・ホーム」
バーサーカーは言いたいことだけ言ってその場を転移した。
後に残ったのは木っ端微塵に砕け散った愚かな伯爵家の屋敷と多数の失禁及び気絶者。
そして、バーサーカーという厄災の歩いた跡という名前のクレーターであった。
――――――――――
その後、件の伯爵家は公の場で嘘を述べて、アンクル商会を怒らせた罰として男爵家に降格させられた上で、一部領地が没収され、辺境の地へと追いやられた。
伯爵家に雇われていたバーサムはハンゾウの手によって、とても言葉では言い表せないような教育を受けた後、お酒を飲むのを止め、またバーサーカーの下で働くようになった。
元々、戦争奴隷でありダーネスによって助けられた過去を持っている為に忠誠心は高く、それなり楽しくやっているそうである。
ただ何故か昔はそれこそ仕事を首になるレベルで好きだったお酒を見ると何故か震える様になったのはご愛嬌である。
めでたしめでたしだファーーー。
因みにこの話を読んでて気が付かれた方がいらっしゃるかもしれませんが、バーサム君はそこまで悪い事してないです。
ただ、お酒が好き過ぎたせいで、仕事を首になり、伯爵家の元で食客という形でただ酒を飲み、バーサーカーの元で右腕(死体処理)として働いてたと、酒に酔った勢いで自慢げに語っていただけです。
それが何の因果か気が付いたらバーサーカーと同等の地位にいるハンゾウによって拘束されて、二度と大好きなお酒が飲めないくらい怖い思いをさせられるっていう。
割とマジで今回の話で一番可愛そうなキャラです。
因みに今回登場した名前すら出てない元伯爵家の人達はTHE悪役貴族って感じの、平民を見下して人間と思っておらず、貴族のみが真の人間であり至高であるみたいな偏った考えの持ち主です。
実際に平民を捕まえて拷問とかしてなかったので、見逃されてますが、何かしらの拍子でダーネスから暗殺者が送り込まれてキリリングゴーないし傀儡洗脳という末路を辿っていた可能性がある感じです。
つまり、ある意味で男爵家になって良かったねって感じですファーーー。
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