俺氏、優遇される


 腹を満たしてから、俺は一応水曜日の午後の授業に向かった。

 普通に遅刻してるが、まあ行かないよりはマシだろう。


 指定されている講義室に向かうが、学園の中は想像以上に静まり返っていた。

 今は授業中だし、当たり前の話といえば当たり前の話なのだが、何となく新鮮味があって、楽しい気分になれる。


 誰もいない廊下、何となくだが走り出したくなるような気分になる。

 流石に廊下を走ったら危ないの自重しつつも、ちょいスキップをしながら講義室へと向かう。


 指定されている講義室についた。

 因みに水曜日の午後に取っている授業は【統率学】という、パーティーでのリーダーとして仲間を統率する方法や、戦場では指揮官として部下を統率する方法含む、様々な場面で訪れるであろう自分以外の人をまとめるという物ごとに対してどのように行うのが効果的なのかを学ぶものである。

 ちょっと興味深かったので取って見た感じだ。


 そっと窓から中を覗いでみる。


 担当の教師が30人程いる生徒達に授業をしていた。板書とかは特に使っておらず、口頭で説明をしている感じだ。

 教師は少し禿げているが、体格が非常に良い中年の男性であった。

 生徒達の方は全員知らない人だった。

 

「誰だ?覗き見をしているのは?出て来なさい」

 ヤベエ、気付かれてしまった。

 まあ、隠れてるつもりとかは一切なかったけど。


「ファーーー。すみません。遅れてしまいました」


「遅れただ?・・・お前、名前は何だ」

 めちゃくちゃ睨んでらっしゃる。これは激おこだな。まあこればっかりは確実に俺が悪い。


「グレン・アスフォールだファーーー」


「あ、そうですか。グレン・アスフォール殿でございましたか。

 でしたら何も問題はありません。いくらでも遅れて構いませんし、来なくても構いません。もちろん単位の方は最高評価で差し上げさせていただきます」


 ???

 急に掌がクルクルに回転したんだけど。


 え?何があった。


「先生、急に何を言うんですが、それは明らかな差別ですよ」

 一人の女子生徒が怒りを含んだ声で怒鳴る。

 ごもっともな意見だ。


「差別ではない。当然の権利だ。

 グレン・アスフォール殿はあのアンクル商会・十二統率者の一人であり、もう既に何万という部下を従え、それ相応の功績を立てておられる。

 そんな彼にたかだが英雄学園の教師でしかない私が教えられることなど何もないわ。

 むしろ私が教わる立場にある」

 なるほど、納得した。

 言われてみればその通りかも知れないな。

 せっかくの特別扱い、別に断る理由もないし受け入れるか。


「ファーーー、じゃあ、ありがたくその好意に甘えましょう」


「はい。もちろんでございます。授業の方は受けられますか?よろしければ最初から説明させていただきますが」


「ファーーー、授業は受けますが、最初から説明はいいですよ」


「かしこまりました。では、お好き席にお座りください」


「ファーーー」

 適当に誰もいない一番後ろの端の席に座る。


「ゴホン。では、授業の方を再開させていただきます」

 そうして先生の授業が始まった。


「この授業は【統率学】である。

 統率学とは、統率について深く学び、これから起きるであろう、様々な誰かを統率しなければならない状況。

 例えば、パーティーでのリーダーとして仲間を統率する場面、戦場にて指揮官として部下を統率する場面、商会の主として従業員を統率する場面。

 そういった場面にて必要な知識を学び、これからの貴方達の将来に役立てていこうという事だ。

 さて、そんな統率において大事なものが何か分かるか?

 さっき、軽く説明はしたが、分かる人は手を挙げなさい」


 何人かの生徒が手を挙げる。

 俺は、まあ悪目立ちしてもあれ何で大人しくする。


「じゃあ、そこのお前」

 先生が土魔法を無詠唱で発動して回答者の椅子を高くあげる。


「はい。私は人望だと思います」


「ふむ、良い答えだな。それも正解だな。他にはあるか?そこのお前、答えて見ろ」

 

「はい。僕は実力だと思います」


「実力か。それも正解だな。ただ、俺はとある一点がとても重要だと思う。

 それは、人望よりも実力よりも重要だ。

 正確に言えばそれがあるからこそ人はついてくるしその人を慕う、それがあるということは実力があるという証明にもなる。

 さあ、何か分かるか?」


 ・・・・・・・・・


 沈黙が走る。


 俺は多分、先生の言いたいことが分かった。

 間違ったら恥ずかしいが、せっかく授業に参加しているし、答えてみるか。


「功績でしょうか?」


「流石、グレン・アスフォール殿だ。大正解だ。

 そうだ、功績だ。

 功績があるからこそ人はその人を慕うし、ついていく、功績があるということはその功績を挙げられるだけの実力があるという証明になるのだ。

 皆、よく覚えておくように。

 さて、そんな功績を上げる方法は幾つか存在し、功績を利用して、どのように人望を手に入れるか含み、次回の授業で解説をしていこうと思う。

 では、少し早いが今日の授業は終わりだ。解散」


 水曜日の午後の授業が終わった。

 割と面白そうな授業だったわ。




―――――――――――――


 面白いと思っていただけたら星やハートを入れて頂けると嬉しい限りです。

 授業内容、実はまだ、考えてないのが幾つかあるんですよ、何か意見があれば教えて頂けると嬉しいです。

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