俺氏、大ピンチ&憑依転生について考えるファーーー


 屋敷というか小城に帰った瞬間にクロが抱き着くってレベルの勢いで俺の方に向かってきた。


「お帰りなさい。ご主人様」


「ただいまファーーー」


「ん?ご主人様から他の女の匂いがします。それもかなり濃厚な匂いです。ご主人様何かありましたか?」


 声こそ優しいがクロの眼が一切、一ミリも笑っていなかった。

 まさかまさか、ベロア先生のことか。

 え?これどう回答するのが正解なの?

 素直にベロア先生とファーーーしましたっていいうか、いや確実にクロが嫉妬を爆発させるし、俺に夜這いかけてきそうだな。

 それは、流石に不味いか。

 じゃあ適当にそれっぽい言い訳をするかって、それも後々バレたら面倒だし、何で誤魔化したんですかって問い詰められるな。


 ・・・・・・・・・


 どうしようか。

 マジでファーーーだな。


「ご主人様どうしたんですか?そんなに悩まれて?」

 

 もう面倒だし所々それっぽく誤魔化しつつ、真実を話すか。

 ほら、よく言うじゃん。嘘の中に本当を混ぜると気づきにくいってね。


「ファーーー、実はだな、ジャポンって国の気を覚える為にベロア先生っていう先生に色々と手伝って貰ったんだ。その気を覚える際にどうしても房中術っていうのをする必要があったから、その時に匂いが付いたんじゃないか?」


「そ、そうですか。・・・じゃあ、ご主人様私にもその気を教えてください」

 なるほど、そう来るか。

 ファーーー、まあいいや。普通に房中術じゃない方法でやってみるか。


「大丈夫です。暗黒怪に所属してましたが、幼かったのもあり、まだ清い身体ですし、そういうのも知識も教え込まれてます」

 これ、もしかしなくても、クロは房中術の知識を持ってる?

 嘘だろ、授業を受けてた時は俺以外誰も房中術って言葉を知らなかったのに。

 いや、でも大いにあり得るな。

 暗黒怪に幼少期に大量の知識をインプットされてるっていう設定だったし。

 

「ファーーー、そ、それは」

 クソ、どうする。

 このまま流れでファーーーしても良い気はしなくもない。

 避妊薬なんてのも錬金アイテムで山ほどあるし、クロは凄く魅力的だし、お胸様がファーーーしてるし。

 しかし、15歳のクロってのは、文字通り精神年齢ではあるが、孫と祖父程年が離れてるからな。

 流石に俺のプライドが許さない。それにヒロインに俺が手を出すってのは散々原作を迷子にさせてる俺が言うのもアレだが、不味い気はする。

 こうなったら最後の手段だ。


 念話

【ハンゾウ、助けてファーーー】

【了解しました】


 その瞬間、音もなくハンゾウの分身の一体が俺の目の前に現れる。


「主様、内密なご報告があります。内容が内容ですので二人っきりで話したいのですがお願いできますでござるか?」


「ファーーー、分かった。すまんが、クロがその話はまた今度な」


 俺は出来る限り平静を装いつつ、ハンゾウと一緒に自室に入るのだった。


「ファーーー、ハンゾウ助かった」


「某は主様の為に存在しているでござる。お役に立てて光栄でござる」


「ファーーー、そうか」


「主様、本当に一つご報告をしなければならないことがあるでござる」


「ファーーー、分かった。報告してくれ」


「主様のおっしゃられている、主人公もどき、ジークでござるが憑依転生の可能性が発覚したでござる」


「ファーーー?憑依転生?それって、つまりどういうことだ?」


「今、主人公もどきの肉体を動かしているのは、主様もいた世界である日本からの転生者でござる。

 ただ、主人公もどきの様子が豹変したとされる、1年前に肉体を動かしていたのは、ジーク、元々こちらの世界で生まれ育った魂でござる」


「ファーーー、理解した。つまり、今主人公もどきの体の中には元々存在するジークの魂と転生者の魂が存在して、今は後者が肉体の支配権を握ってるって訳か」


「そうでござる」


「ファーーー、それは実に興味深いな。ハンゾウ、主人公もどきの肉体の支配権を元のジークに戻す方法はあるか?」


「今調べている最中でござるが、おそらく、得意属性でありレベル10の魂魔法使いがいれば、可能ではあるでござる」


「ファーーー、魂魔法って確か超絶希少だよな。それもレベル10って無理くね?」


「正直、難しいでござる。他にはジークの魂の魂力が強くなり、無理やり肉体の主導権を握り返すとかでござる」


「ファーーー、今出来てないのを見ると難しそうだな」


「そうでござるな」


「ファーーー、しっかし、一つの肉体に2つの魂か。

 あれ?でも何処かで聞いたことがあるなその話?

 ファーーー、思い出した。魔王殺しの英雄学園にて登場する【殺戮の魔王・ヘルデ】だ。

 確か、魔樹森林にいる理性を無くした半人半魔の化け物が魔王の肉体を乗っ取り、ただひたすらに殺戮を繰り広げだしてっていうクソ難易度を持ったルートだったな。

 意図して起こそうと思わないと起きないようなルートにはなってたし、エンドコンテンツの一種としてプレイヤー受けは良かったけど。

 ただこれは魔王が復活しない今関係ないし、余り参考にもならないな。

 ・・・・・・・・・

 ハンゾウはどうするのが良いと思うファーーー?」


「そうでござるな。某としては現状特に問題は起きていないでござるので、明確な解決方法が見つかるまでは触らないで置くのが良いと思うでござる。

 魂が難しい領域でござるし、下手に触って魂消滅とかなったら大変でござる」


「ファーーー、確かにね。オッケー、じゃあまあ普通に監視を継続してくれ」


「分かりましたでござる」





――――――――――


 魔王殺しの英雄譚の魔王の過去編について知ってる方がいれば分かってしまうかも。

 どっかで、番外編として魔王殺しの英雄譚の大雑把な話を登場させたいとは思ってる。

 その方が面白いと思うので。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る