俺氏、暗殺者系ヒロイン(部下)を呼び出す


 私は生まれた時から暗黒怪に所属する暗殺者として育てられてきた。

 96番これが私の名前であり、管理される番号であった。

 赤子の時から食べ物には毒が混ぜられ、1日20時間の訓練を行い、感情をなくす為の特別な処置が行われてきた。

 生まれた時からそれが当たり前、日常の世界。

 1歳、2歳、3歳、4歳と年月が経過するごとに私の周りの人は死んでいき、姿を消していった。

 5歳の時には実戦に導入されて、初めて人を殺した。

 どうやら5年間暗殺者として特訓された私にはそれ相応の技量があったようで、次々に暗殺任務を言い渡されて、言われた通りに任務をこなしていった。

 どれだけの人を殺して、この手はどれだけの血に汚れたのか分からなくなったある日の暗殺任務にて私は返り討ちにあった。


 その時の任務は恐ろしい勢いで勢力を拡大させていっている、ダーネスという組織の首領の殺害であった。

 ダーネスの首領がいるであろう、とある地下街にて潜伏をするところまでは良かった。

 しかし、何故かあっさりと居場所を見破られ、そのまま拘束された。


 文字通り手も足も出なかった。


 殺される。そう思ったが、何故かそうならず、逆にダーネスに所属することとなった。

 組織の報復が絶対にある。どうせ私は殺されると考えていたが、次の日には暗黒怪は潰れていて、あれだけ恐ろしかったボスはダーネスに絶対の忠誠を誓う傀儡に成り下がっていた。


 あっけに取られた。

 それと同時に涙が出てきた。


 今までの人生は何だったのか。

 私は何の為にあんな辛く苦しい特訓を受けて、暗殺者として働かされたのか。

 何もかもが分からなくなって苦しさで頭が回らなくなって気が狂いそうになった、私をダーネスは救ってくれた。

 私に暗殺者ではなく、アンクル商会というダーネスと協力関係にある商会のただの売り子見習いとして働かさせてくれた。

 96番という名前、否、番号ではなく、クロという名前を付けてくれた。

 分からないことはいっぱいあった。

 それでも先輩達は優しく教えてくれて、少しずつ仕事が出来るようになった。


 人の命を奪うのではなく、ただ普通に売り子として働く。

 私にとってそれは何よりの救いだった。


 いつしか、私はアンクル商会とダーネスに心の底からの忠誠を誓っていた。

 そして、いつかアンクル商会とダーネスの創設者様に出会えたなら、お礼を言いたいこの命を賭けて忠義を尽くしたい。そう考えるようになっていた。


 そんなある日、私の元にアンクル商会七幹部の一人、アテナ様がやって来られた。

 到底人間とは思えない程の美貌とスタイルを持ち、天使様や慈愛の聖女といった様々な二つ名で呼ばれる最強の女性、一国の王すらも彼女の美貌の前に跪ずき、王国最強の剣士相手に剣で完封試合をするほどの力を持っている。 

 元は薄汚れた暗殺者である私からしてみれば雲の上の存在であった。


「クロ、光栄に思いなさい創造主様が貴方をお呼びよ」

 アテナ様の声はただただ美しかった。

 同性である筈なのに思わず惚れてしまいそうになる程だった。

 って、あれ?アテナ様は今何とおっしゃられた。 

 アテナ様の創設者様?それって神様じゃない。

 何で神様が私なんかを呼んでるんだ。


「創造主様がお待ちよ、呆けてないでこっちに来なさい。今転移するわ」


「あ。はい」

 イマイチ状況を上手に読み込めていないが、慌ててアテナ様の元に駆け寄る。


「転移」

 私は何処かに転移した。


 目を開けるとそこには一人の少年がいた。

 年の頃はおそらく今の私と同じくらい、オレンジ色の髪が特徴的だった。

 ただ、それよりも目を引いたのはその少年から出る圧倒的な力だった。

 

「ファーーー、過去編に出てきたロリクロちゃんのまんまや。おお、感激だな。あ、アテナ、お前はもう下がって良いぞ。仕事に戻ってろ」


「かしこまりました。ではまた何かありましたらお呼びください」


 目の前の少年は私を見るや否や目を輝かせて、不思議な言葉を話す。

 過去編?ロリクロちゃん?一体どういう意味だ。

 いや、それよりも。今彼はアテナ様に指図した。そしてアテナ様はそれを受け入れた。

 本当にこの人はアテナ様の創造主ってこと?

 

「もしかして、貴方様は神様ですか?」


「ファーーー、神様って、神様ねぇ。いや違うよ。俺は普通の人間だよ。多分。知らんけど。しっかし結局クロちゃんって名前を貰うのか。原作でもそうだったし、運命の強制力ってのはあるんだな。

 あ。ごめんね。なんかよく分からないことを言って。そうだな、クロちゃん何か欲しい物とかして欲しいことある?

 俺の出来る範囲ならしてあげるよ。原作でも好きだった君に会えて今凄く嬉しいからね。

 そうだね。今の俺なら死者蘇生とかも死んですぐで死体が残ってれば出来るし、お金が欲しければ一生遊んで暮らせるだけの大金をあげれるし、力が欲しければ経験値ストック使って今すぐに経験値の指輪が使えるレベル50まではあげれるよ。神器系統もやろうと思えば作れるし好きなのあげるよ。

 さあ、クロちゃんは何を望む?」


 目の前の少年は私に神様じゃないと言った。

 でも、少年は死者蘇生やレベルの強制上昇に一生遊べるだけの大金に神器創生まで用意できるといった。

 そんなの神様以外の何者でもないじゃないか。


 でも、今の私が望む物はたった一つだ。


「私を救ってくれたアンクル商会とダーネスの創設者様にお会いしたいです。そして助けてくれたことに対する感謝を伝えたいです」

 

「ファーーー、そうか。じゃあもうその願いは叶ったな。俺がアンクル商会とダーネスを作った創設者様って奴だ。しっかしそうか、嬉しいことを言ってくれるなクロちゃん」


「貴方様が、創設者様なのですね。・・・・・・私を救ってくれて本当にありがとうございます」

 私は深々と頭を下げた、頭を下げずにはいられなかった。

 

「ファーーー、そんないいよお礼なんて、クロちゃんはそれ相応の苦労してきた。それにさ、まだクロちゃんは7歳でしょって、俺も今7歳だけど。まあ、俺は特別だな。

 ようは俺達大人が君のような何も悪いことをしていないのに辛い目に合って苦しんでる子を助けるのは当たり前って話だ。何も気にすることはない。そしてこれから幸せになっていけばいいさ」


 創設者様の言葉を聞いてると何故か急に涙が出てきた。

 嗚呼、なんて、なんて暖かくて、大きいのだろうか。

 こんなに心が温かくなるなんて、嬉しい気持ちになるなんて。

 嗚呼、本当に創設者様は神様の様だ。


「創設者様、私を側に置いてください。私は少しでも創設者様の為にお役に立ちたいです。私に恩を返させてください」


「グレン・アスフォールだ。俺の名前はグレン・アスフォールだ。という訳でこれからよろしくな。クロちゃん」

 創設者様、いいや、グレン様は私に手を差し伸べてくれた。




―――――――――――


 補足説明

 という訳で今作で初めてしっかりと出てきた原作でのヒロインの一人クロちゃんです。

 次の話で色々と主人公の口から補足説明をいれますので安心してください。


 某、芸人がちらついた読者もいるでしょうが、作者もちらつきました、正直、このキャラは暗殺者設定なので、名前を元々番号から取ってていう風にするつもりでいて、偶々出した番号が96番で。

 96なら、クロやなってなって、特に何も疑問を抱かずに書いてて、主人公にちゃん付けをさせた瞬間に。

 あってなって。まあいっかってことでそのままゴーです。


 深く気にしないでください。


 後、主人公の謎のファーーーは口癖です。

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