第14話 番(つがい)

番(つがい)


「な 何を言い出す、大人をからかうんじゃない」

「なんだ、やっぱりあんたも同じだったんだね」

「なんのことだ?」

「そんなにいやかい?」

「お 俺は外に行く、マキを集めてくるよ」

「素直じゃないな~」

「まったくこっちが誘ってるのに…」

「ねえおねえちゃんも一緒に行かない?」

「そう言えばあんたらは何処に行くんだい」

「おじちゃんは隣の国を越えてさらにその向こうの国に行くって」

「そうなんだね」


レドラは先ほどまでは少しふらついていたが、段々意識がはっきりして今は逆に気分爽快。

まあそれでもすぐに移動できるかといえばNOと答えるが、3人が居る岩に囲まれた住処は割りと暖かく、いまはかけ布を纏っていてその下は裸と言う状況。

ラポーチが居なければすぐに抱きつきドーンの性欲を掻き立てようとするところだが。

まあそれは後でもかまわない、それよりもこれからどうするかの方が問題だ。


遊撃隊に襲われて助かったという事は、次にやつらの前に顔を出せば、当然のことながらやつらはレドラを殺すまで付きまとうだろう。

そして助けてくれたドーンやラポーチもいずれやつらの的になる。

だが、何も言わず何もせずこの土地を去ることは出来ない、それは巨人族の矜持に反する。

それに世話になった領主にも恩義がある、そこまで考えてどうするか?


「どちらにしてもこの町には居られないのは、決まったようなものか…後はどうやって去るかだね」

「どうするの?」

「あんた、いや子どもに頼むなんてアタイも焼きが回ったかね」

「作戦だね」

「いやいやまだ何をするかは決めちゃいないよ」

「でもするんでしょ」

「するにしてもあんたには頼めないよ」

「う~ん、それはどうかな~」

「相手は軍隊なんだ、こないだだって危なかっただろ?」

「それはいつ何をするかで違ってくるんじゃない?」

「そう言えば今更だけどあたいの怪我はどうやって直したんだい?」

「それはねこうやって手をかざしてお願いしたの」


「おい、それ以上話すな!」


2人が話しているとドーンが薪を集め帰ってきた、夜だというのによく動けるものだと、関心していたが。


「なんだい、聞いちゃ悪い事でもあるのかい?」

「事と場合によってはあんたも…」

「おじちゃんこの人は大丈夫だよ、もう付いてくるって決まっているから」

「??」

「仕方が無い、おまえから話すか?」

「うん、え~とね良く聞いて、私はどうやら聖女とかいう人みたいで、いくつかの特殊な力を持っているみたいなのね」

「聖女?伝説のか?」

「お姉ちゃんの持ってきた武器を見せて?」


彼女の持ち物には、袋に入ったナックルがあったがこの街にはこの武器を直す事ができる鍛冶屋はいなかった。

剣や鍬などの刃物は直せても特殊な武器を直すにはそれ相応の経験と技量が必要だ。

ぼろぼろになった皮のグローブに縫い付けられたさび付いた鉄の板、いくつかの部品が手を動かしても邪魔にならないように設計されていたのだろう。

レドラはそれらを捨てずに持って居たのだ、いつか直すつもりで居たのだが、今までにこの武器を治せる技量のある鍛冶師は見つからなかった。

今使用しているのはいわゆるメリケンサックといわれているものだが、先日兵士達との戦いでどこかへ落としたらしい。

何故か袋に入れて持ち歩いていたグローブだけが残っていた、レドラはそのグローブを袋から取り出しラポーチの目の前に差し出す。


「あたいの武器はこれだけど」


その武器とはいえないぐらいぼろぼろになった部品にラポーチが手を触れると、その塊は光り出し見る見るうちに光り輝く伝説のグローブへと変化していった。


「う うそだろ…」


直るどころか今仕上がったばかりと言っても良いぐらいの輝きを見せる、そのグローブを手に取りレドラは自分の手にはめてみた。

皮は分厚くだがなめらか、そして甲の部分は虹色に輝く金属の板が取り付けられており指の部分もしっかり守られるように、以前の形よりさらに洗練され。

どう考えても数倍パワーアップしている、そのグローブはそれほど存在感に溢れていた。

そしてグローブから不思議な言葉がレドラの頭の中に流れてくる。


(汝この武器を手に取るならば善行を尊び民の力となる事、努々(ゆめゆめ)忘れる事無かれ、その志し忘るる事なければ、汝に無敵の力を与えるだろう)

「す すごい、力が溢れてくる」

「そう言うことだ」

「マジか…」

「そう、これでおねえちゃんも仲間だね」


その日2人目の従者が加わり、今後の事を話し合った。

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