第15話 町は取り戻す

町は取り戻す


この日から遊撃隊の兵士は血眼になってラポーチ達を探すが、3人が同じ所に居ては危険だと感じ、レドラを助けた次の日の朝には快適だった岩の宿泊地から移動する事にした。


「で、作戦は?」

「2手に分かれてあいつらを混乱させる」

「ラポーチは俺とともにやつらのキャンプからレドラがやられた痺れ薬を盗み出す」

「投げつけられたやつだね、あれは麻薬に近いよ、やつらも厳重に隠しているはずだけど、どうやって探すんだい?」

「あたしに任せてこれでもお鼻が良く利くのよ」

「そう、ラポーチに薬のありかを突き止めてもらい、俺がそれを奪取する、あんたは闇にまぎれてあんたを探し回るやつらを個別に処理してくれ」

「分かった、でも本当に良いのかい?」

「もうあんたは仲間だ、仲間の安全を作るのも仲間の仕事だろ」

「お姉ちゃん任せておいて、しっかりやるから」

「分かったよ」苦笑い


その日3人は計画を行動に移す、昼間は山に篭りレドラは逃げながらも確実に遊撃隊をしとめて行く。

ドーンとラポーチはその間に厳重に守られている痺れ薬のあるキャンプのテントへと向かった、そこには薬が保管されていたテントだけ5人もの兵士に守られていた。


「おい、交代だ」

「おう」

「バギさんまだあの大女捕まらないんですか?」

「ああ中々しぶといな」

「仕返ししに来ますかね」

「どうだかな、それよりちゃんと見張っていろよ」

「へい」


闇に紛れ2人はテントに近づくと見張りを一人ずつ片付ける、そして最後の一人はラポーチがおびき出す。


「あれ?他のやつらは?」

「こんにちは~」

「誰だ!」

「お兄ちゃんこんなとこでなにやってるの?」

「おいおいまじかよ、おじょうちゃんどこからきたの?」

「あっち」

「そうかそうか、これから良い事しようか」

「え~いやだ~」

「こら おい まてよ」


これで見張りは全て居なくなりドーンはテントを荷物丸ごと背にしょうと、暗闇の中へと消えていった。

ラポーチを追いかけ良い事をしようと思った部下は、結局逃げられただけでなく見張りという仕事も満足にできなかったことになる。


「くそっ逃げ足の速いやつだ、ったく ん? あれ?テントは?」


その1時間後。

3人は山の洞窟がある場所に集り、まずは奪ってきた薬を隠す。


「それどうするんだい?」

「半分は隠し半分は使う、やつらの食い物に混ぜるのさ」

「あ~そう言うことかい」

「その後は分かるよな」

「手下をすべて黙らせちまえば後は親分だけってことだね」

「ああそいつは任せるが一応邪魔されないように俺が見張っておく、存分にやってくれ」

「有難うよ、やっぱりあんたは良い男だね~」

「成り行きだ、あまり勘違いしないでくれ」

「照れちゃって、も~スキ!」


実際顔は赤らんでいるのだから分かりやすい、ドーンには女性と付き合ったことがなく免疫が無いのだから仕方が無い。

戦場で彼らの相手をしてくれる情婦は居ないし、いい年してと言われても無理はない。

まあ誰にでもいいときはある、それが少し遅かったというところではあるが。

この後の話しはまあここに書かなくても分かるが、軍隊の兵士を無効化した後始末。

地方の遊撃隊とはいえ隊長である子爵率いる46人からなる軍隊、全員殺すとなると相当の覚悟をしなければいけない。

まあその結果はどうなるかと言う事ぐらい分かっているが、ドーンもレドラも殺人凶ではなく本来平和主義な巨人族、自分達だけではこの問題の解決は無理と言っていい。

だからレドラも事前に少し動いていた、町の管理官である準爵位を持つトッド・ジョーダンに事の顛末と処分について後始末を頼む事にした。


すでに用心棒を一人殺されているのだ、さらに娼館の女性が2名殺され他にも彼らの犠牲になった町人やお店の店主も大勢出ていた。

だが相手は国からある程度の優遇処置を戴いている派遣軍、持っている証書には「此度の遠征においては町の通貨や税の対象からは除外する事」

そう金さえ払わなくても良いと国の中央から許可を得ているのだ、さらに犯した罪さえ許されているのだからとんでもない話。

それも証拠があればの話であるが、そのためにはいろいろと画策しておく必要がある。

だからレドラは準爵位のトッドと話すことにした。


「それでどうしろと?」

「やつらを無力化するから、後始末を頼むよ」

「やれる事は少ないぞ」

「じゃあ指をくわえて粛清が始まるのをただ見ているだけか?」

「いやそこまで無責任じゃない」

「仲間が一人殺されてんだ、それに町での粗暴なやつらの行いも見ているんだろう?」

「…だがあの証書が有る限りやつらの所業は許されている」

「だからアタイらがその書状を奪って燃やせば良い話だろ」

「そんな事できるのか?」

「ああ計画はさほど難しくない、仲間が遊撃隊の殆どを無効化する、その後アタイがあの糞忌々しい隊長を始末する、そして証書を奪うって寸法、その後は私らがこの町を去れば証拠も残らないだろう」

「確かに、だがおまえも出て行くのか?」

「出て行かなければいつか調べられたときにあんたも道連れになるよ」

「何アタイらに責任をおっかぶせて、後は知らないといえばいい、町のだれかが怒って暴走したとね」

「おまえには恩が有る妻を助けてくれた恩が、又恩を受けたままでは立つ瀬が無い」

「律儀なやつだね、そんな事かまわないさ、それよりアタイの後釜を直ぐ探しておかないと又変な軍隊が来たら同じ事のくり返しだよ」

「ああそうだな、分かったその話なんとかしてみる、気をつけてくれよ」

「誰に言ってるんだい、これでもフレアフィールのレドラといえばちったあ名が知れているんだ、それに今は仲間もいる安心しな、その代わり後始末は頼んだよ」

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