第9話 出会い

出会い


村を出てから7年、いつの間にかラポーチは12歳になり美しい少女に育っていた、できるだけ顔を隠すようにフード付きのポンチョをいつも着ていたが、彼女は顔を隠すのがあまり好きではなかった。

いつものようにドーンはラポーチに町の手前で隠れて待つように指示して、彼は町の中へ買い物をしに行く。

山で獲れた獣の皮や木の実を売り代わりに着るものや道具を購入する。

その間彼女は言われた通り待つことにしたのだがその日は運が悪かった。


「お~こんなところに乞食が隠れているぞ」

「まじかよ」

「どれどれ」


ラポーチには一応ドーンから護身用の剣を持たされていた、当然のことながらあれから7年も経ちドーンの手ほどきで剣術も身に着けていたが、彼女の力では大人数人を相手するにはまだまだ無理があった。

そしてごろつきは彼女のフードをはがして驚いた。

髪は金髪そして目は碧眼、体付きも12歳になると身長は158センチまで伸びわずかに胸も膨らんでいる、しかも顔は農家の出とは思えないほど整っていた。


「お~かわいいじゃね~か」

「まじかよ、いいね~」

「君はこんなとこで何してんのかな?」

「俺たちといいことしようぜ」

「いやよ」

「あ~なんだと」

「くさいわ、近寄らないで」

「んだとこのあま!」


ラポーチはこの男たちが良からぬことを考えているのがその鼻ですぐに分かったが、ここにいろとドーンに言われていたのですぐに逃げるわけにはいかなかった。

戦うことより逃げることを優先すれば彼女にはかなり分が良かったはずなのだが。

チンピラの中にも足が速い奴は存在する、大人と女の子の足の速さでは、やはり大人の男には敵わない。

躊躇したために一瞬逃げ遅れてしまった。


「ほ~ら捕まえた」

「離せ!」


彼女は懐から小剣を出しごろつきの腕を切りつけた。


シュ!

「いてっ!」

「このあま~~~」


そこへ残りのごろつきも集まってくる、全部で5人。

小剣を構えたラポーチは死ぬことも覚悟したが、その覚悟は誰かの手により霧散する。


「おい、お前ら何してる?」

「だれだ!」


そこにいたのは女、いやアマゾネスもびっくりな大女、ドーンと比べても大きさは甲乙つけがたい。

まとっているのは皮のビキニ、もちろんこの世界にはビキニなどというものは無く、皮のパンツと皮の乳バンドとでも表現した方がよいだろう。

そして皮と鉄の板で作った脛当てと、腕にはひじ当てや手袋。

体中に流れるような入れ墨が彫られ、一見しただけで彼女が相当強い戦士だということがわかる。

細かいことはまた後で書き込むとして、彼女は一人だけなのだがその力は普通の人族の10人分に匹敵する。


「あたいは、この町で用心棒をしているレドラってんだが」

「レ レドラ!」

「おいけえるぞ!」

「な なにもしてねえよ!」

「ずらかれ!」

「なんだ、遊んでいかないのか?」


どうやらラポーチは助けられたらしい。


「どうもありがとうございます」

「ん~あんたこの辺じゃ見かけないね、どこから来たんだい?」

「え~と…」

「すまん俺の連れなんだが」


そこへドーンが現れる、2人並ぶと圧巻だった。


「なんだいあんた?」

「俺の名はドーン・ボルカノ俺の連れになんか用か?」

「おじちゃん待ってその人は助けてくれたの」

「ん?」


そこからは隠れる必要もなくなった為、レドラに連れられ町の中に入り行きつけの食堂で食事がてら話を聞くことになった。

この町はそこそこの大きさがあり食堂も数軒、だが大男と大女が入れる店は限られている。

テーブルも椅子もその体を支えるにはそれ相応の大きさが必要だからだ。


「ここだよ入んな」


レドラという巨人族の女に連れられて町の食堂へ入ると奥の大きめの椅子に通された。

椅子はどこから持ってきたのかわからないほど大きな木の切り株が数個置いてあるだけ。

そこに腰かけてもラポーチはテーブルからわずかな体が覗くだけという大きさ。


「で どういうことだ?」

「おじちゃん私さっきまでチンピラに絡まれてたのよ、そしてこのレドラさんが助けてくれたってわけ」

「そういうことか、それはかたじけない」

「いやいいのよ」

「それよりあんたたちこの辺じゃ見かけないわよね」

「ああ~それなんだが、俺は敗残兵でこの子は途中で見つけた孤児なんだ」

「へ~面白いコンビだね」

「いやあんたこそ珍しいのだが」


女とはいえ巨人族はどこへ行っても戦争に駆り出され、特に女の巨人族は数が少ない。

それは巨人族のいる国から女の兵は出さない取り決めだから、そう彼女は少し特別らしい。


「なんで巨人族の女がこんなところに?」

「いちゃ悪いかい?」

「いやそういうことじゃなく」

「あたしは志願したのさ、あたしの村では男はすでに数百人と戦に取られてね、あとは子供しか男は残ってなかったのさ、だから無理やり参加させられる男衆より血気盛んな女はどうだいってね」

「だがそれなら町にはいないはずでは」

「戦いに出て何度も何度も戦って、それで生き残って、そしたらこうなってたのさ、ちなみにあたしゃこうみえてもまだまだ現役だよ」

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