第8話 旅立ち
旅立ち
5歳の少女はなぜか泣いてはいなかった、親と離れ兄弟と別れるのに。
他の誰もが不思議に思っていたことだが、それは彼女にもわからない、たぶん前世の記憶があったから。
彼女には普通の子供が持つ悲しみがあまり分からなかったのだ、確かに5歳といえば犬ならすでに成人として扱われる。
だが前世も生きることにしかあまり考えが及ばなかった、今期は目の前もしっかり見えている。
兄弟は悲しそうな顔をしており母は泣き崩れているのに、私の心はなぜかワクワクしている。
「では頼む」
「大丈夫だ任せろ」
「ラポーチ元気でね」
「ポーチ」
「なんで?なんでポーチが行かなきゃならないんだよ」
「フレーム仕方がないんだ」
「おれ、おれ…」
「泣くな、それよりお前はみんなを守れるぐらい強くなれ」
「わかっているよ、でも」
ラポーチが何で去らなければいけないのか、子供達には嘘をついてある。
口減らし、豊作なのに少し考えればわかるはずだが、本当のことを言えば誰かに話してしまうだろう。
そうなればいずれその話を聞きつけた軍隊や悪い奴らがこの村に訪れる。
拷問虐殺、ラポーチの居場所をはかせるために悪者は何でもするだろう、知らなければどうということはない。
この町は大男に救われた、それだけだ。
収穫したての麦と乾燥芋そしてラポーチをその背に乗せて大男は村を出て行った、戦いで使った鎧と兜は洞窟に置いてきた、これからの旅には足かせになるからだ。
だがラポーチが手で触れたあの大剣は皮で作った鞘に入れて今でもその大きな背中に背負っている。
そこからの2人は町や村を避けて進んだ、とはいえ何もない場所を選んでも食料は必要だ。
特に水は大切、だから川の近くを移動しながらドーンは進むことにした。
同じ所に寝泊まりするのは一日か二日に限定し、人目を避け道を選んだ。
たまに洞窟を見つければそこには数日いることもあったが、やはり長居はしなかった。
川で魚を取り、山で獣を捕まえ木の実を取って何年も人里を避けて暮らしてきたが。
そんな日も長くは続かなかった。
「今日はどこまで行くの?」
「港の2つ手前の町までだ」
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