毒親育ちの彼女は誘拐犯に恋をする

本葉かのこ

プロローグ

 ようやく動けるようになって、その白い頬に指を伸ばした。

 氷のようだった。

 自分の手が、いかに暖かいのか思い知った。熱を分けられればいいのにと思うのに、それ以上触れていることはできなかった。

 無意味だ。自分がしたことは全て、無意味だった。

 あの子の笑顔を思い出す。白い光の中、幸せそうに笑う女の子。


『いっしょに、遊ぼうよ!』


 あの子は、代わりのお人形。幻想が壊れてしまえば、また新しいお人形を探すつもりだった。それなのに―

 無性に、あの子に会いたかった。

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