文化祭の後 3

 令和五年十月三十一日の夕方。

 透子の部屋。

「めっちゃ寝たな!」

 灯子が大声を出した。

「三時間くらいね」

「いや、三時間アリバイゼロじゃん!」

 仁は、はっと息を飲んだ。灯子が大声を出した理由が分かっていなかったが、言われてみれば非常にまずい状況だった。

「朝から順番に起こったことを話してもらってたけどさ、先に聞くわ。お前のカバンが見つかったの何時?」

「……多分、二時過ぎ……くらい……?」

「八時に登校……ってことは六時間? 六時間中三時間アリバイないの? いや、三時間じゃないな。一人で誰にも見られずにトイレでトイレットペーパー巻き付けてたんだよな」

「……でも免罪なんだよ」

「それは分かってる。ただ、『屋上で三時間寝てました』は、すごい雑な言い逃れにしか思えないだろ」

「そう──だね」

 仁は、自分は何もしていないのだから冤罪は晴れるだろうと楽観視していた部分があった。しかし、周りから見れば、自分の行動は言い逃れのための嘘のように思えることも分かる。

「………………」

「………………」

「一旦、続き聞こうか」

 仁は大きく息を吐いてから、続きを話し始めた。

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