文化祭の後 2

 令和五年十月三十一日の夕方。

 灯子の部屋。

「木島との会話の詳細はそこまで話さなくていいよ」

 灯子が少しイライラしている風に言った。

「灯子が話せって言ったんじゃないか」

「……え? 言ってないけど」

「朝からのできことを話せって言ってたよ」

 灯子は面倒臭いというのを顔の全面に出してため息を吐いた。

「その話せっていうのは、話してくださいじゃなくて、お前が話すのを許可するって意味だからな?」

「あー、まあそうだね」

「……木島に頼んだ方がいいんじゃない?」

「何を?」

「窃盗の疑いを晴らすの。一緒にいたならアリバイ的なのも証明してくれるんじゃないの?」

「いやー。そんな頼み事できるような関係性ではないからさ」

「三年間同じ部活じゃないの?」

「いや、ほとんどコロナ期間で部活に参加してなかったからさ。部室にいたとしてもお互い本読んでるか書いてるかだったし。喋れはするけど、頼み事はさ」

「でも、犯罪者にされそうなんだから、そこは頼めよ」

「うーん。アリバイって言っても十分くらいしか一緒にいなかったからさ。いつ盗まれたかも分からないのに、十分だけアリバイがあってもしょうがないよ」

「え、何? この後すぐ部室出るの?」

「うん」

「………………」

「………………」

「いや、話せよ」

「あ、うん」

 仁は、今朝の出来事の続きを話し始めた。

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