終幕

二人きりの世界 1/2

「疲れた~」


「そりゃなあ」


 ライブ後にあんだけ浜辺を走り回ったら疲れんだろ。


 当然、


「喉乾いた!」


 そうなるよな。


「あーちょい待ち」


 財布を開くが、小銭もお札もない。


「すっからかんだわ」


 普段スマホ決済だし、少しだけ入れていたお金は電車賃で消えた。


「私も」


 言い出しっぺのくせにアンタも一文無しかい。


 顔を見合わせて苦笑する。


「どうすっかねえ」


 頭を抱えていたそのとき、


「こんな時間に女の子が二人でなにしてんの」


 背後から声がかけられた。


 警察か?


 強張るカラダをゆっくりと動かし、振り返る。


「どーも、こんばんは」


 同年代、もしくは年下?


 身長は150cmぐらい。


 全身黒い服を身にまとった幼い顔立ちの女の子が立っていた。


「こっ、こんばんは」


 つっかえながらも挨拶を返すベガ。


 うん、人見知りなのによく頑張った。


 偉い偉い。


 頭を撫でてあげたいところだけど、女の子がいるので我慢。


「で、なにしてたの?」


 夜だからよくわかんないけど、多分暗めの茶髪か?


 肩までのセミロング女の子は再び尋ねてきた。


「えっと……」


「……」


 人を刺して逃げて来ました。


 飲み物を買いたいのに、お金がなくて困っています。


 なんて言えるわけがねえ。


「あっ! もしかしてお金ない感じ?」


「えっ……なんでわかったんですか」


 占い師? それともオカルト系の人?


「だって二人とも逆さまに広げてるんだもん」


 人畜無害そうな笑みを浮かべて、女の子は言った。


「あははは、ちょっと待ってて」


 女の子は自販機に走って行ってしまった。


「なんか不思議な子だね」


「おん。同い年か年下か、わからん」


 どっちにしろブーメランだろ。


 こんな時間に、あの子はなにをしに来たんだろう。


 海を見に来ただけか?


 そんなことを考えていると、


「お待たせ」


 女の子がペットボトルの水を二本買ってきてくれた。

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