二人きりの世界 2
「……どうも」
なにかが引っかかるが、素直に礼を言って受け取る。
「……ありがとうございます」
ベガが受け取るのを横目に蓋を開け……え? あいてる。
まさかの開封済み。
「飲まないの?」
「……」
飲むわけねえだろ。
不審すぎんだろ。
と言う勇気は持ち合わせていない。
「ちょっ、ベガ!」
相当喉が渇いていたんだろう。
蓋があいていることについてなにも言わず、一気飲み。
「ぷっはぁ……生き返った」
数秒間、じっと彼女を見つめる。
「どうしたの?」
「……いや、なにも」
異変なし。
ちょっと構えすぎたか。
蓋をあけてくれたのは、ただの親切心ってことにしておこう。
それに、ベガが水を飲んでいるのを見たら、自分も相当のどが渇いていたことを自覚しちゃった。
意を決して飲む。
「うん」
普通の水っぽいな。
渇きを癒すことを優先に飲んだせいか、味を感じる余裕はなかった。
「ここら辺の子? 見たことないけど」
唐突な質問。
どう答えようか。
ベガは無言で私を見つめてくる。
わかってたことだけど、丸投げだな。
「いや、海を見たくって」
「あー成程ね」
腕を組んで頷く女の子。
「あの」
「ん?」
「何歳ですか」
好奇心を抑えきれず、聞いてしまった。
「
「え、嘘」
「マジマジ」
衝撃的な事実。
ボクたちよりも年上だった。
「ふわぁ……」
呑気に欠伸をしたベガに視線を向けると、
「ちょっ!」
彼女は顔面から砂浜に倒れかけていた。
なんとか間に合い、両腕で彼女を支える。
「ベガ? ベガ、おいベガ!」
呼吸はしているが、ゆすっても目を覚まさない。
「あははは、純粋な子っていいねえ」
その言葉をボクはちゃんと聞き取れただろうか。
急に眠気が襲ってきて、ベガと共に砂浜に倒れてしまう。
やっぱりあの水……蓋があいていたのって。
必死に眠気に抗っていると、楽しそうに鼻歌を歌いながら女の子が顔を覗き込んできた。
目が合う。
あぁ、折角ここまで来れたのに。
ボクたちはどうなるんだろうか。
ベガと一緒なら……。
終わり
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