二人きりの世界 2

「……どうも」


 なにかが引っかかるが、素直に礼を言って受け取る。


「……ありがとうございます」


 ベガが受け取るのを横目に蓋を開け……え? あいてる。


 まさかの開封済み。


「飲まないの?」


「……」


 飲むわけねえだろ。


 不審すぎんだろ。


 と言う勇気は持ち合わせていない。


「ちょっ、ベガ!」


 相当喉が渇いていたんだろう。


 蓋があいていることについてなにも言わず、一気飲み。


「ぷっはぁ……生き返った」


 数秒間、じっと彼女を見つめる。


「どうしたの?」


「……いや、なにも」


 異変なし。


 ちょっと構えすぎたか。


 蓋をあけてくれたのは、ただの親切心ってことにしておこう。


 それに、ベガが水を飲んでいるのを見たら、自分も相当のどが渇いていたことを自覚しちゃった。


 意を決して飲む。


「うん」


 普通の水っぽいな。


 渇きを癒すことを優先に飲んだせいか、味を感じる余裕はなかった。


「ここら辺の子? 見たことないけど」


 唐突な質問。


 どう答えようか。


 ベガは無言で私を見つめてくる。


 わかってたことだけど、丸投げだな。


「いや、海を見たくって」


「あー成程ね」


 腕を組んで頷く女の子。


「あの」


「ん?」


「何歳ですか」


 好奇心を抑えきれず、聞いてしまった。


二十歳はたち


「え、嘘」


「マジマジ」


 衝撃的な事実。


 ボクたちよりも年上だった。


「ふわぁ……」


 呑気に欠伸をしたベガに視線を向けると、


「ちょっ!」


 彼女は顔面から砂浜に倒れかけていた。


 なんとか間に合い、両腕で彼女を支える。


「ベガ? ベガ、おいベガ!」


 呼吸はしているが、ゆすっても目を覚まさない。


「あははは、純粋な子っていいねえ」


 その言葉をボクはちゃんと聞き取れただろうか。


 急に眠気が襲ってきて、ベガと共に砂浜に倒れてしまう。


 やっぱりあの水……蓋があいていたのって。


 必死に眠気に抗っていると、楽しそうに鼻歌を歌いながら女の子が顔を覗き込んできた。


 目が合う。


 あぁ、折角ここまで来れたのに。


 ボクたちはどうなるんだろうか。


 ベガと一緒なら……。


終わり

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