第8話 仲良くなった?
トントン。
「ん?」
肩を叩かれ顔を上げれば、
「レッスン終わったよー」
疲れを感じさせない満面の笑みを浮かべたベガが立っていた。
「お疲れさん」
よいしょっと立ち上がる。
明るい様子のベガにほっとする。
紫苑に鋭い視線を向けたのは、多分ボクの勘違いだったんだ。
「本当にありがとうございました!」
紫苑が勢いよく頭を下げているけれど、顔には疲れが滲んでいた。
さてはベガ、自分のペースでレッスンしたな?
紫苑はまだ入ったばっかりだってのに。
軽くいびりじゃん。
こんなことする子じゃないのに。
って、私の考えすぎか。
誰にでも優しい子だもん。
自分を慕ってくれている紫苑をに対して、厳しく接する理由がない。
「んじゃあ帰ろうか」
「うん!」
バッグを持ったベガに声をかけ、
「じゃあね、紫苑」
ドアへと向かう。
「はい! あっ、ベガさん。またご連絡しますね!」
紫苑が元気に手を振る。
「うん、またね」
ベガは柔らかい笑顔でそう言った。
でも、彼女の後ろに立っていたボクは見てしまった。
彼女の目は全く笑っていなかった。
なんでだろう。
理由がわからないまま一歩踏み出した瞬間。
紫苑の言葉にひっかっかった。
またご連絡……?
「え、ベガ」
「なに?」
「紫苑と連絡先交換したの?」
きょとんとした顔で、
「うん、したけど。それがどうかしたの?」
どうかしたのじゃねーよ。
どうかしまくりだよ。
自分からは積極的に交友関係を広げようとしないベガが、自ら紫苑と連絡先を交換した?
不自然。
大事件発生。
モヤモヤする。
今日の紫苑に対するベガの対応はずっとひっかかるところばかりだった。
仕方ない。
こんなとき頼りになるのは
メンタルも体調も良くない彼女を頼るのは気が引けるけど。
ベガの拠り所がボクなように、ボクが相談出来る人は静姉だけだから。
よし、帰ったら連絡してみよう。
そう決心し、さらっと腕を組んでくるベガと二人並んでスタジオを後にした。
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