第2話 HOPE

それから数日後、街を覆っていた灰の雲が晴れる兆しを見せた。地平線の向こうに見え隠れする太陽の光が、久方ぶりに人々の心を和ませた。


食料の蓄えも尽きかけていた。近隣のスーパーを捜索すると、奇跡的につぶされぬままのコンビニが見つかった。棚に並ぶ缶詰とパン、そして大切な水。感動的な発見だった。


「ありがとうございます! 本当に助かります」


号泣する女性とその我が子。少しでも多くの食べ物を分け与えたかったが、自分たちの存亡もかかっている。クズのような気分だった。


夕暮れ時、pipeの音が遠くから聞こえてきた。誰かが生きている証しだ。人の姿を求めて音の源に向かうと、がれきの中で一人の老人が座っていた。


「君は生き残ったようだな」


穏やかな目を向ける。被災した病院から逃げ出したのだという。温厚な老人は、これからの世界を耕すための指針は「思いやりと感謝」だと語った。その言葉が胸に突き刺さる。


翌朝、自宅マンションの一室を診療所に改装した。持てる医薬品と器具を集め、瓦礫の中から救出された負傷者の手当てを始めた。つらい仕事だが、生きる目的を見出せた気がする。


「頑張れよ。まだ生きる価値があるんだぞ」


そう励ますと、瀕死の人々も弱々しく頷いてくれる。小さな希望の灯は消えない。


何時間も診療を続け、やっとのことで一服できた。振り返ると、小さな診療所の前には負傷者が行列をなす。必死に生きようとする姿に、胸が熱くなるのを覚えた。


一人ひとりに丁寧に対応し、出来る限りのケアを提供する。これが今の自分にできることなのだと思う。誰も見捨てない、そんな世界を目指したい。


こうして医療活動は続いていく。患者の笑顔を見ることが、俺の力になっている。辛いこともあるが、決して先が見えないわけではない。

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