第二十四話 優先順位




 想像して。

 このとてつもない重力がのしかかる身体は、いつも使っている斧だと。

 使い始めた時は、いつもいつも、振り回されていた斧だと。

 大きさこそ自分と同じだけれど、重さは三倍ほどある。

 ええ、ええ。

 今のしかかっている重力の方が斧より遥かに重たい。

 遥かに重たいし、この重力が必要だともわかっている。

 わかっているけれど。

 この重力を認識したままでは、素早く動け。

 ないだろうか。

 そんな事はないのだろうか。

 この重力を抱えて素早く動けるのではないだろうか。

 そうだ。

 無理だと決めつけた時点で、無理なのだ。

 大丈夫だと思った時点で、大丈夫なのだ。

 よし。

 いけるいけるいける。

 この重力を誤魔化さずに認識したまま、あの人を捜そう。

 大丈夫。


 なんて。

 優先順位を見誤るな。


(さっさとあの人を見つけて、木の根を『砂の国』に行かせないようにして、『砂の国』に戻る)










(2023.8.22)



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