第二十三話 ふふん




 拒絶されているのか。

 拒絶しているのか。

 両方だろう。土羽梨は思った。

 両方必要なのだ。土羽梨は納得した。


「ふ。ふふ。この重たさが心地いいわ」

「キャー!カッコイイ!言葉と表情とは裏腹に全身ブルブル震えているけどカッコイイ!」

「ありがとう」


 土羽梨は重たい腕を上げて、ハシビの黄色い声援に応えた。




 気合を入れて、気合を入れて、気合を入れて。

 何日経ったのだろうか。

 未だに睡眠以外の生理的欲求が訪れない事が功を為していた。

 眠れば体力が大体回復する中、明るくなったり暗くなったりする景色の目の当たりを何度か繰り返して、ようやく土羽梨は立ち上がる事ができた。

 例えば生まれたての砂鹿のようだったとしても、とりあえず立ち上がる事はできたのだ。


 ふふん。

 土羽梨は勝ち誇ったような笑みを浮かべて、一歩、また一歩と、重たい身体を抱えるように歩き出した。











(2023.8.22)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る