8月9日 禁忌4

 大本営発表をラジヲで聴いた。驚いた。未来人の言う通り、蘇連が本当に宣戦布告したようだ。それを見越してなのか、ラジヲの前でただ呆然とする子どもたちを尻目にまた投函の音が鳴る。今回は郵便入れに罠をしかけてある。虎鋏とらばさみ……と言うと大袈裟おおげさだが、それに似たような物をしかけた。まんまと罠に引っかかった未来人の声が聴こえる。俺は子どもたちを怯えさせる悪魔の手紙を送るようなやつを絶対に許さない。命だけは奪うつもりはない。しかし、それ以外の尊厳という尊厳を破壊してやるのだ。……いいや、馬鹿馬鹿しい。そこまではしないでも良い。ただ謝れば、それだけで良い。尊厳破壊を行うなど、戦争を批判する権利を放棄するようなモノだ。俺は罠にかかった未来人を見に行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺的夢十夜 アヤマオンライン @at-auy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ