8月3日 一本書ける夢

 その夢を見た日から、私は頭の中でキャラクターを動かすのが更に好きになりました。元々は某妖怪のアニメを観たのと当時(今でも他よりは売れてるけど、流行ってはいないかな)大流行していた某パズルゲームのキャラクターにすごい魅力を感じたのが合わさってできたオリジナルキャラクターを脳内で動かして活躍させていました。まあ、それをオリジナルと言っていいのかわかりませんが。とにかく、何かに感化されてはそれのパクリみたいなのを友人と絵で伝えあって楽しんでいました。実際こんなタイトル存在しないだろうと思って作ったお絵描きゲームの名前と完全一致するタイトルになってしまって狙ってないのにパクリになったこともありました。話が逸れましたね。今回の夢は、味付けしていくうちに竹取物語を参考にすることになってしまったけど、味をつけるまでは本当に何も一切の影響を受けなかった物語です。味付けした物語は、小学生の頃から創作していて未だ完成していない作品なので、ちゃんと物語として人前に出しても恥ずかしくないレベルにまで到達できたら公開するかもしれません。


 僕は二つに分かれた国が争っていた世界ムミキューに生まれた王子……名前は、つけてもらえなかったから、僕が自分につけた名前を紹介することにする。名前は、スモック。国が二つに分かれたって言ったけど、僕は猿型生物の国【モキ王国】側の人間だ。もう片方は国という体裁は取ってるけど、ほとんど連合軍みたいな感じだ。名前なんかないみたい。曰く、先住民族である自分たちは貴様ら下等生物に名乗る名などない、らしい。まったく、この戦争を終わらせたのは僕の功績なのに、全て兄上に奪われてしまった。おかげで僕は王族だった事実をかき消され、今こうして吟遊詩人として生活している。まあ、これはこれで幸せなんだけど。なんせ聴衆がファンタジーの詩だと思ってるポエムは、真実なんだから、いつか知ったときにびっくりするもん、きっと。だから、僕は真実が、本当の歴史が公表されるまでこうしてのんびりと生きていようと思っていた。

 だけど、兄上は暴君だった。戦争を起こしたんだ。しかも、今回の戦争は僕に止められる戦争ではない。両者共に人の心がないからだ。そのうち吟遊詩人として活動している僕も戦場送りになるだろう。それまでに、この国における武術の達人たちに修行してもらおうかと思った。

 まずは、北東の果てで人が崖から落っこちないように見張っている、リュッケンさんに会いに行った。リュッケンさんのいる部屋までの廊下は、昔の猿型生物が作ったという古典的な罠が満載だった。今風の罠しか知らなかった僕は何度か痛手を負ったけど、これくらい些細ささいなことだ。吟遊詩人として活動しているときに、妄想語って食う飯は美味いか? と言われたときのことを思いだして痛みを耐えた。そしてリュッケンさんの部屋にボロボロの状態で僕は入った。リュッケンさんは自分でしかけた罠のくせして、大丈夫か、大丈夫かと僕に治癒薬を飲ませてくれた。生き返った僕は思わず、リュッケンさんがしかけた罠じゃないかい! って、ツッコミを入れちゃった。これから武術を教えてもらう予定の人にそんな態度をとってしまった。だけどあの人は悪いことをした自覚はあったみたいでお詫びとして家宝だと言う大きな武器をもらった。どこかで見たことあると思ったら、ここで習う手裏剣という物を大きくして中心の穴に鎖を通した代物しろものだった。これをもらう権利が自分にあるのか悩んだけど、リュッケンさんは僕が王族であることを知ってたみたいで、あなたになら任せられます、と再度礼をされた。使い方はリュッケンさんもよくわからず、我流で良いと言われたのでとりあえず腰の横につけて、後ろから奇襲されたときに後ろに回転を加えながら投げることで返り討ちにする使い方と、鎖のリーチを活かした中距離攻撃をとりあえずは我流で習得した。旅の途中に。

 次は、南東の端っこで同じく崖から人が落っこちないように見張っている、ファブレスさんに会いに行った。ファブレスさんは常に一人でいるのが大好きみたいで、人をなかなか家にあげることはない……というより、誰も入れないような感じの家になっている。家そのものが炎で、普通に入れば火傷では済まない。だったらやることは一つに決まっている。僕は大声でファブレスさんを呼んだ。何度も何度も呼んだ。当然こないことはわかってたから、秘策としてとんでもなくイヤな詩を語った。あんまりにもひどい内容だから、ファブレスさんは降りてきて、こんなひどい詩あるか! って叱責しにきたんだ。ファブレスさんは炎そのものだから常に頭に血が昇ってる。だから怒らせれば向こうから勝手にくるんだ。でも、僕の顔を見た途端跪ひざまずいて、僕に火を吹く術を教えてくれた。この国の四隅を見守っている四天王のみんなはちゃんと僕のことを覚えていてくれてるみたいだ。お父さん、おばさんや兄上と違ってみんなとても良い人だ。この中の誰かと家族になれたら良かったのに。そう思った。火を吹く術は、咄嗟とっさ移動に使おうと思った。攻撃に使うには文字通り火力がでないからだ。

 三番目は、そのまま西に進んで南西の果てで国境を監視している、セイオウさんに会いに行った。……にしても、この大きな手裏剣を持っていると少し動きにくい。四天王のみんなは尊敬してるけど、全員作ってるのが武器なのがなんとも言えない。武器をしまっておくことができる物をセイオウさんが持ってるとありがたいな。そう思いながらセイオウさんの居城きょじょう、ヒジリ城に吟遊詩人としての仕事も忘れずに向かった。ヒジリ城で聖剣オウをもらった後、武器をもう持てないからしまえる物はないかと訊いてみると、北西の四天王、カヅがそんな入れ物を造っていると教えてくれた。聖剣はとても軽く、どう振っても強いとセイオウさんが言っていたから、剣術は昔セイオウさんに習ったスタイルで行くことにする。セイオウさん結構な歳なのに、僕のことを忘れてなかったのはとても嬉しかった。真実を知るのは四天王の僕だけ。この戦争が終わったら、五人で革命でも起こそうかな。

 カヅさんからもらった万能バッグに武器を全てしまい、僕はいつでも戦場に駆りだされても良い準備が整った。カヅさんは無口だけど、完全に僕を信頼してくれていた。この人を革命に巻き込むわけにはいかない。そう思うと、革命を起こす気もなくなった。吟遊詩人としてその生涯を終えるのもアリなのではないか、と。

 結局、こんなヒョロガリの吟遊詩人じゃ戦力にならないと判断されたのか、戦争が終わるまで兵士になることはなかった。戦争は、こちら側に不利な条件がつけられ和解した。戦勝国から、敗戦国になった瞬間だ。僕はなんて情けない兄上なんだろうと四天王たちから聞いた話で思った。なんと停戦協定を結ぶとき最後まで暴力でなんとかしようとしてたみたいで、馬鹿馬鹿しいと思った。兄上が処刑され、王族がいなくなった今、王位継承権があるのはこの僕だけ。四天王のみんなは僕を王にはしたくなかったみたいだけど、頼み込んだら了承してくれた。

 一人で先住民族を皆殺しにするも良し、平穏に暮らすも良しの良い身分になった。でも、僕は博愛主義者のつもりだ。だから、先住民族ともすぐに仲良しになった。酒に強いのも幸いしたのかな。それで、先住民族の代表さんが教えてくれたのは、自分たちの集合体にも四天王がいること、そしてこの世界のどこかにここからの出口があるんじゃないかということだ。僕は外の世界があるのなら見てみたいと思ったから、先住民族とともに研究にのめり込んでいった。

 後にこの少年は大宇宙を救った英雄の一人になるのだが、それはまた別の話。

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