🌕️【掌編小説】地から空へ、言葉の手紙。
.
ねぇ、返して……。
私の彼を返して。
もう会えない……。
そんなの分かってる。
それでも会いたい……。
愛しい彼に……。
大好きな雨が嫌いになった。
だって、雨が降ったあの日に貴方がいなくなったから。
私の想いを伝える前に、貴方は死んだ。
この溢れる想いと私と悲しみを残して……。
次々と一気に込み上がる貴方との思い出。
いつも明るく元気だった貴方。
笑顔が絶えなかった貴方。
そんな貴方に一目惚れした私。
今思えば、あの瞬間が一番幸せだった。
でも、貴方と過ごした瞬間。
そして、貴方の“死”。
全てが“夢”なら良かった。
全てが“幻”で“嘘”なら良かったのに。
思い出に浸りながら、唇噛みしめた。
世界で一番大好きだった貴方。
世界でただ一人愛した人。
貴方がいれば、それだけで良い。
貴方がいれば、何にもいらなかったのに。
………なのに、どうして死んでしまったの?
『うそだ。ウソだ。嘘だ』
涙が後から後に流れ出る。
信じたくない。
信じられない。
でも、変わり果てた貴方を見て、イヤでも“事実”だと知った。
もう何にも考えられない。
もう何にも思い浮かばなかった。
ただ、頭に過るのは貴方と貴方の名前だけ。
私は……大きく息を吸って、
『バカヤロウ!!』
『戻って来い!!』
貴方に向かって怒鳴った。
そうしても貴方は、私の元に戻っては来てくれないけれど。
私は声が枯れるまで必死に叫んだ。
きっと、貴方に聞こえているはずだから。
私は貴方への思いを声が出なくなるまで天国にいる貴方へ叫び続けた―――…。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます