第9話

 ぬいぐるみかをかかえた、さっちゃん。

 床に落ちている、さっちゃんのぬいぐるみ。  


 私は、床に落ちているぬいぐるみを手に取る。



「さっちゃんは、私を怖がらせようとしたんじゃないよね。忘れないでってことなんだよね」


 さっちゃんがいなかったかのように、私は過ごしていた。

 さっちゃんがいなくなったことを自分たちのせいだと責め続けて、両親は病んでしまった。

 


 そうじゃないよ、って。


 幼かったさっちゃんは、むずかしいことは考えていないはず。


 仲良くして。

 たまに、思い出してくれたらいい。

 家族バラバラにならないで。


 そういうこと、なんだよね?







 実家に戻ってから、私は言った。


「お父さん、私に帰ってきてほしかったんだよね。さっちゃんの手型まで準備してまで――」


「お父さん、バケツとぬいぐるみしか、きみちゃんの部屋に持っていってないぞ」


 じゃあ、あの手型は……?


 さっちゃん、なの?


 

 

 

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