キャロルの夫

 彼女が店に来てからどれほど経ったかはわからないが、この日は客がまばらで、外の店先を掃除するリオーナは黒いフォードが店の近くに停まったことに気づいた。彼女は店に戻り、キャロルにそのことを伝えた。

 白いジャケットの男が店の扉を開ける。

「ただいまー」

 男は大声で店中に響き渡るように叫んだ。リオーナはびくびくして男を観察する。マフィアだろうかと思ったら、キャロルが喜びの声を上げた。

「ロバート!」

 キャロルはジャケットの男に抱きつき、彼の頬にキスをした。

「おかえりなさい!」

「商談がうまくまとまったよ。これで来年までやっていける。キャロル、忙しくなるぞ」

 ふたりは店の奥に消えた。

 ガランとした店のなかでリオーナは座り込んだ。少し肩を落としている。

 すぐに立ち上がると、仕事に戻った。

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